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よるがあけるよ

第3章 平和主義者


『……!?。何故そんなことを!。彼らは危害を加えてないじゃないですか!!。』
10Dは機械生命体の群れとヨルハ隊員の間に割って入り、自身の小剣で仲間を牽制する。
「危なくないからとか……私には関係ありません」
「そうだ。そもそもあの大型機械生命体を造ったのはコイツらだろ? 十分危険じゃないか」
目の前の2機を警戒しながら背後の機械生命体に距離を取るように促すが、機械生命体達も混乱しているらしく蜘蛛の子を散らすように思い思いの方向へ逃げ出した。
「ワアァ、ボウリョクハンタイ!」
「逃ゲロ! 煮ゲロ!」
「仲間割レ良クナイ!!」
ヨルハ隊員の近くへ逃げてしまった機体は洩れなく破壊される。
列車の近くに逃げてしまった機体は攻撃に巻き込まれ瞬時に鉄屑に変わる。
『ダメ……ッ!。落ち着いて!。』
逃げ回る無数の機械生命体達に呼び掛けるが、荒れ狂う現場で冷静になれる者など居る筈がなかった。
ヨルハ隊員を止めようにも、識別信号があるため妨害が出来ない。
機械生命体の断末魔が聞こえる度に強い罪悪感が心を蝕んでいく。
自分が司令官に報告しなければこんな事態にはならずに済んだのに。
絶え間なく減っていく機械生命体達を見て、成す術がない10Dは力を失ったようにその場にへたり込み大粒の涙を溢す。
『やめて……殺さないで……っ。』
震える声で訴えるが、その言葉は誰にも届くことはなかった。
無限に続くように思える破壊音が自責の念を駆り立てる。
――私が司令官に友好的な機械生命体の存在を報告しなければ。
――私が機械生命体達の列車にコアを与えなければ。
――私がもっと上手く隊員を説得して穏便に事を済ませられていれば。
踞って泣いている場合ではない。それは10Dもよく分かっているが、どうしようもない悲しい絶望に呑み込まれ思考が停止しかけていた。
「くっ……奴め、飛行もするのか。これではポッドでの攻撃しか出来ないな」
リーダー格のE型の焦る声が聞こえた。
その直後にミサイルの発射音が空へと舞い上がる。
「あと少しだ。残りはアタシがやるから22Eは6Eの方に行ってこい」
「了解。……リーダー、手伝います!」
どうやら列車型の機械生命体は空も飛べるらしい。
10Dは涙を拭いながら頭上を見上げた。
「推奨:退避」
ポッド107が10Dの首根っこを引っ張って移動させようとする。
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