第3章 平和主義者
何やら大きな音が聞こえた後、E型とB型のヨルハが慌ただしく先頭へ走って行くのを見て10Dが立ち上がる。
『……何の音?。』
「報告:敵性反応あり。機械生命体及び10Dの造った列車から出ている模様」
『そんな……。』
数時間前にポッド107が予測していた悪い状況が今まさに起ころうとしている。
10Dは足元に座る機械生命体に目を向けた。
「オネーチャン、ドウシタノ?」
『……こっちに来て。隠れるよ。』
機械生命体の腕を引っ張り、誰も居ない側の線路に下ろした。ホームの下には空洞が空いている。ここなら身を隠せるだろう。
「ドーシテ隠レルノ?」
『いきなりでごめんね。お願いだから、しばらくは何も考えずにここでジッとしてて。』
「ワカッター」
本を抱き抱えたまま機械生命体が踞る。
それを確かめると10Dはすぐにホーム上に戻って走り出した。
『列車の機械生命体を止めなきゃ……!。』
ヨルハ隊員や機械生命体達の居る場所に行く。
列車型の機械生命体が目を赤く光らせ、ギシギシと機体を軋ませながら動いていた。
『何をしたんですか?!。』
リーダー格のE型に10Dが声を掛ける。
「この機械生命体が本性を現しただけだ」
傷付いた仲間のヨルハ隊員2機を物陰に横たわらせ、10Dにそう返した。
「報告:6Eに攻撃され刺激を受けたことにより、コアに内蔵されていた戦闘の記録及び敵認識システムが復旧した模様」
「報告:10Dが破壊した機械生命体から採取されたコアである為、アンドロイドへの敵対視が確立している」
E型の随行支援ユニットが述べた後に続いてポッド107が報告をする。
「……フン、敵性反応が出ようが出まいが、どのみち機械生命体は敵だった訳だ。とっとと壊すぞ」
そう言うと、E型は列車の機械生命体に向かって斬りかかった。
「アンドロイド……殺ス……我等ガ主タル存在ハ、地上ニイル全テノ知的生命体ヲ抹殺スルヤウニ我々ヲプログラムシタ……オ前達ハ、知的生命体デアル人類ガ創造シタ、人類ノ模造品……ヨッテ、オ前達アンドロイドモ敵ナノダ」
列車の機械生命体が雑音の混じった声を響かせながら言う。
車体から飛び出したサーキュラソーを避けながらE型が命令を下した。
「……22E、31B。お前らは周りの機械生命体を排除しろ!」
その声で近くの2機が大人しい機械生命体達に向け武器を振り回す。