第3章 平和主義者
「オネーチャン、ドーシテソンナ隅ッコニ居ルノー?」
カシャンカシャンと音を立てながら1体の機械生命体が10Dに近寄った。
『それはね、除け者にされちゃったからだよ。』
「ノケモノッテ何ー?」
『邪魔者ってことー。』
少し不貞腐れた様子で10Dがポッド107を支えに頬杖を突く。
「ナカマナノニー? 家族ナノニー?」
『…………。』
「回答:ヨルハ部隊には仲間意識はあったとしても、家族のような深い絆は基本存在しない」
ポッド107は10Dがバランスを崩さないように高度を保ちながら浮かんだ。
機械生命体はポッド107の言葉に首を傾げながら手に持つ本を開く。
『……私の仲間とはもう交流しなくていいの?。』
10Dは隣に座って本を読み始めた機械生命体にそう訊いた。
「ナンカネー、チョット恐カッタノー。ダカラオネーチャンノ所ニ来タンダ!」
安心デキルカラネー、と言いながらページを捲る。
『そっか……安心か。』
もしもの時は守ってやらないと。
ヨルハ隊員が攻撃態勢に入ったら自分の力じゃ止めることはできないから、せめて逃がすくらいはしてやりたい。
そう思いながら、好き勝手に動き回るヨルハの隊員達を見据えた。
22Eが足元に群がる機械生命体を踏みつけないようにそっと歩く。
「困ったなぁ……」
普段なら蹴散らして進めるのに。
簡単に壊せてしまうのに、下らない調査のおかげで下手に手を出すことができないジレンマを抱える22E。
「コンニチハ、ゴキゲンヨウ」
「一緒ニ遊ボウヨ」
「ドウシテソンナコワイカオスルノ」
色んな声が交ざり合う。22Eは落ち着かない様子で拳を握り締めた。
機械生命体と云えば暴力的な印象しかない。
この場の機械生命体は襲っては来ないものの、機械生命体に対する恐怖を暴力で捩じ伏せることで掻き消していた22Eにとってはかなりのストレスになった。
周りを取り囲まれる恐怖。手を出せない焦り。
敵意はないと分かっていても、この嫌悪感はどうにも出来ない。
「ど、退いてほしい……私はリーダーの近くに移動したいんだ」
恐る恐る言うと、機械生命体達はもたもたと道を開け始めた。
意外と話が通じるものだと思いながら作られた細い通路を抜け、仲間の元へ行く。