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よるがあけるよ

第3章 平和主義者


ヨルハ部隊が来る前の意気込みが虚しく萎んでしまったな。そう思いながらもまだ希望があるのではないかとヨルハ達にあるかどうか分からない良心にすがる。
敵とは、自分や人類に仇成す対象のことを指すことだと10Dは思っている。
だが大部分のヨルハ及びアンドロイドの認識はもっと単純なものだ。「機械生命体だから壊す」だけだ。
そもそも機械生命体は襲ってくるのが大前提であり、他の皆も敵意のない機械生命体の存在に戸惑っているだろう。
目の前のヨルハ達が機械生命体を破壊するかしないかなんて考えるのは恐らく今回が初めてだ。
どちらに転ぶのか皆目見当も付かないが、10Dはただただ良い方向に進むようにと念じた。



「……この鉄屑は何だ?」
31Bが怪訝そうな顔つきで車体に触る。
「先程10Dが人類文明である列車を模したものだと言っていた。確か列車は人や物を高速で遠くに運ぶ乗り物の筈だが、こんなハリボテでは何も出来そうにないな」
リーダーの6Eが車体に付いている機械生命体の頭のパーツに目を向けた。車体端の上には太い筒が伸び、そこから機械生命体が顔を覗かせているかのような置かれ方をしている。 頭をキョロキョロと回し、たまに瞬きのように目の光を点滅させた。
他にも前面や側面の所々に頭や手足などが付いているのが確認できる。
「きゃははっ、気持ち悪~い!」
42Bがゆっくり前後に動く車体の下の無数の脚を見て楽しそうな調子で言った。
オロオロしながら機械生命体達がアンドロイド達に話しかける。
「ワ……私達ハ平和ヲ愛シていマス。コノ列車モ、ミんなガ楽シメルヨウにト力ヲ合わせテ造リマシタ。ヨカッタラ、ドウゾ乗ッてミテ下サイ。私達ハ貴方ガタあンドロいどトモ仲良クナりたイのデス」
「平和! 家族! ナカマ!」
「ドウゾ、ヨロシクオ願イシマス」
手を伸ばして握手を求める。
が、6Eはそれを拒否し自身の腕を組んだ。
「まだ認めていない……貴様ら機械生命体の危険性が取り払われるまでは手など握ってやるものか」
目も合わせずにそう返す。
言葉でどんなに良いことを言おうと、内心では別のことを考えているかもしれない。アンドロイドだってそうなのだ。
考えて喋ることが出来るのなら、嘘を吐くのも不可能ではないだろう。
潔白を確証するまでは何処までも疑うべきである。
6Eはそう考え、周りを取り囲む機械生命体を睨み付けた。



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