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よるがあけるよ

第3章 平和主義者


複数人分の声と足音が聞こえる。
潜めるように。囁くように。だけど何処か乱暴な調子で、闇に紛れて遠くから響いてくる。
もうすぐだ。すぐに近くに迫ってくる。
階段の上から改札へ続く通路を眺めた。吹き抜けていく風が10Dの人工皮膚を撫で、髪やスカートを揺らす。
いつもなら冷たいはずの風を、妙に生温いと感じた。
僅かに緊張している。今から来るのは仲間だと云うのに、なぜ強張る必要があるのだろう。
嫌な予感を掻き消すように、10Dは階段下に見えた人影に手を振った。
「お前が10Dだな……司令官から話は聞いている。早速調査に取り掛からせてもらおうか」
ズカズカと複数のヨルハタイプのアンドロイドが階段を上ってきた。
10Dは胸元に手を構え敬礼をする。通り様に足を踏まれそうになり、咄嗟に避けた。
同じバンカーに所属しているものの、どれもあまり馴染みのない顔だ。恐らく精鋭部隊だろう。機械生命体の調査にしては大袈裟な気がする。
全員で5機居るらしい。揃って10Dを囲むように立ち、見下ろす。
皆ヒールの高いブーツを履いているため、S型と同じブーツを着用している10Dとは視線の高さが違いすぎる。得も云われぬ威圧感に畏縮しながら現状報告をした。
『ゆ……友好的な機械生命体は、この近くに居ます。総数は約50体……言語能力があるので、どうぞ声を掛けてあげてください。レール上には人類文明である「列車」を模した製造物もあります。今のところ安全に作動しているようです。』
「了解。危険かどうかはこちらで判断する」
そう告げると、5機はさっさと機械生命体の群れが居る方へ歩いていった。10Dとポッド107がその後に続く。
B型が3機とE型が2機、見た目はほぼ同じようなものだが纏っている雰囲気と身に付けている装備で何となく目測を立てた。
アンドロイドの隊が来たことに気付いた機械生命体達が少しずつざわめき出す。
無数のざわめきが重なり、すぐに雑音で溢れ返った。
「オネーチャン、イッパイ!」
雑音の中、聞き慣れた声が耳に入る。よく話しかけてきてくれた子のものだ。
「ふん……本当に喋るんだな」
「すっごぉーい。12Sも来れば良かったのにね、ハッキングし放題だよ!」
はしゃぎながら跳ねるB型が不穏なことを言う。
ハラハラしながら10Dがヨルハ隊員と機械生命体の間に割って入り、波風を立たせまいと促す。
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