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よるがあけるよ

第3章 平和主義者


10Dは小さく奥歯を噛み締める。
こんな機械生命体達が羨ましく思えた。
ヨルハは感情を出すことは規則で禁止されている。だから家族になるなどという馴れ合いの意識も全体的に見て存在しない。
結束を固めるのは推奨されるのに、絆を深めるのは許されないのだ。
矛盾はしていないだろうか。情にやられて作戦に支障をきたす前例があるとしたって、上層部は感情を目の敵にしすぎではないか。
そんな疑問を見つけ、10Dはまた腕を組んで黙り込む。
ポッド107は横でふわふわ浮かびながら悩む10Dをただただ見守った。



あと少しで、ヨルハの少数部隊がここに来る。
駅廃墟で過ごし数時間が経った。
待っている間、オイルを列車に足すのを手伝ったり、機械生命体達と雑談したりなどした。
少し前に抱えていた疑問など機械生命体達と接している内にすっかり霞んでしまった。
難しいことなんて考えなくていい。今までのやり方で何も不満なんてなかったんだから、改めて無理に結論を出さなくても良いのだ。
思考を巡らせるのが面倒になってしまった10Dは開き直って、あと数時間の内にやってくる仲間達を迎える準備に集中した。
件の機械生命体達は皆穏やかでコミュニケーションもしっかりと取れる。列車も、何にも危害を加えることなく前後に動き、幼げな機械生命体を数体乗せて楽しませている。
その様子を確かめ、10Dは安心した。
これならヨルハの隊に見せても大丈夫だ。始末されることなんてない。
せっかくアンドロイドを敵と認識せずに友好関係を持とうとしてくれる機械生命体を、普段通りに壊してしまうなんて残酷なことだ。
こんなに愛想が良いんだから、殺す必要なんてないだろう。寧ろ殺さないでおいてほしい。
アンドロイドと機械生命体が仲良くなれば戦わなくていいんだ。
人類と機械とエイリアンで平和に過ごせたら一番素敵だろう。
少しでもそんな理想に近付くために、今回は機械生命体の良い印象をヨルハ隊員達に与えなければ。
10Dはそう意気込み、空を見上げた。
真っ暗な頭上には、隊列を組んだ飛行ユニットの光が星々に紛れるように流れている。
きっと上手くいく。根拠のない自信を持って10Dはホームの階段の前から下を見下ろし仲間を待った。


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