第1章 常闇のアンドロイド
集まった形状記憶合金は全部で7つ。
『レジスタンスキャンプに行こうか。』
収集物の数に満足した10Dは拠点に戻ることを提案した。
地図で現在地を確認してから目的地へ向かう。
景色が把握しにくいせいで毎日のように走っている場所だとしても土地勘に自信が無くなるのだ。
「警告:目的地のレジスタンスキャンプは走っている方向と反対にある」
『え、また?。』
「報告:ここに配備されてから目的地についての警告は通算169回目」
暗いのに加えて10Dは他のアンドロイドよりも地形の認識能力が低くすぐに道に迷ってしまう、いわゆる方向音痴という欠陥があった。
今まで何度もバンカーの開発部や地上のメンテナンス屋に診てもらったが、どういうわけか何処にも異常はないらしい。双方から匙を投げられ、ただ単純に「個性」として扱われるハメになった。
『こっち?。』
「否定:そっちは崖。推奨:地図を再度確認」
面倒そうな顔をしながら10Dは端末の地図を表示した。
「目的地をマップにマーク。ゴーグルに反映」
ポッド107が10Dの戦闘用ゴーグルに方向案内のデータを転送する。
『あ……すごいね、これ。視界に矢印が出たよ。』
「報告:迷子を繰り返す10D向けに製造されたオプション。10Dがスリープモードに入っている際にレジスタンスキャンプに居るメカニックに依頼し追加。メカニックへの報酬は10Dのポシェットから徴収した」
『どうりで財布が軽いと……まぁいいや。これならちゃんと辿り着けそう。ありがとね、ポッド。』
新しい機能に感心しながら10Dが矢印の方向へ颯爽と走る。随行しているポッド107の照らす範囲から飛び出す勢いだ。
『………ぐあぁッ!?。』
突如、進行方向から10Dの悲鳴が上がった。
「報告:ビルの壁」
『いたた……この矢印、直線でしか表示してくれないのか…………。』
障害物にぶつかり倒れ込んだ10Dをポッド107がライトで照らし出す。
出端を挫かれた10Dはヨロヨロと立ち上がり、ポッドの灯りで建物の有無を確認しながら進んだ。