第3章 平和主義者
「動ケルカ? 足ヲ動カシテミテクレ」
「ア……アアア………ア……シ……」
ゆっくりと重厚な音を立てて車体が動く。
『列車も足で動くの?。』
「報告:本来は車輪であるが、機械生命体の製造したこの列車は壊れた機械生命体から採取した手足を使用している模様」
ポッド107の説明を聞いて10Dが見易い位置に移動し車体を確かめる。
地面に面している所に無数の脚が生えていた。数十本分の脚が全長15メートル程の車体を支えている。
気持ち悪い、と10Dはやや引き気味に目を背けた。
ズズズ……と地面に鉄が擦れる音が続く。
動きは緩慢で、まるで這いずっているように見えて格好が悪い。でも動こうとしている。
それだけでも成功した内に入るんじゃないかと思った。
『動いて良かったねぇ。』
近くに居た機械生命体に話しかける。
「ハイ……デモ、モウ少シ調整ガ必要デスネ。結構時間ガ掛カリソウデス」
『そっか、じゃあ今日はもう戻るね。また来るよ。』
そう言い残し10Dはポッド107と共に駅廃墟の外に出て、そのまま高架下沿いに南へ向かった。
外灯に照らされながら10Dが歩いていく。幾つか電灯が減っている気がした。
おそらくあの機械生命体の形を模した電灯が撤去されたんだろう。仕事が早いものだ。
暫く進むと、少し前に倒した機械生命体達の残骸がまだ辺り一面に転がっていた。
10Dはその場にしゃがみこんで、機械生命体から出た部品を拾い始める。
「疑問:換金も出来ないような粗末な部品を集める理由」
ポッド107が10Dの頭上でそう問い掛けた。
『んー……駅廃墟の機械生命体の真似。』
手探りで利用できそうな部品を探す。
暗視機能にも限界がある。あまり小さい物ははっきりと見えない。
10Dは戦闘用ゴーグルを下にずらし首から提げた。
すかさずポッド107がライトを点灯する。
『ありがとう、ポッド。』
歯車やネジなどを掌一杯に集めてはポシェットの中に放り込む。動く度にザリザリと部品同士が擦れ合う音がした。
ポシェットにぎりぎりまで詰め込むと、10Dはゴーグルを元の位置に戻す。
『終わったよ。今度はキャンプに行こう。』
ポッド107を連れてまた移動する。