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よるがあけるよ

第3章 平和主義者


『やぁ、戻ったよ。』
コアを抱えて駅廃墟のホームに戻る。
機械生命体の数は先程より増えているように思えた。
「ワァイ、コレデ列車ウゴク!」
「アりガトウござイマス。コアを入レル箇所ハこちラデス」
誘導されたのは車体の先頭部分だった。
どうやら先端部分に内蔵機器が集中しているらしい。よく見ると中心に開閉出来そうな金属板の蓋があった。
「ココカラジャ難シいでス。一旦降リマシょウ」
言われるがままホーム下に降りる。蓋には背が足りず届かなかった為、中型の機械生命体が踏み台代わりになって10Dを下から支える。
『ここに入れるんだね?。』
「ソウデス。オ願イシマス」
蓋を開け、10Dがコアを中に嵌め込む。
周りの端子や銅線を傷付けないようにそっとコアから手を離して蓋を閉めた。
『入ったよ。これで動くかな?。』
「アリガトうゴザいまス。一旦、様子ヲ見テミましョウ」
そのまま足場になってくれていた中型の機械生命体がホームの上に10Dを戻す。
コアを入れた後の微調整を機械生命体が済ませ、起動を待った。
ポッド107だけが、少し不満気にその一部始終を見守っている。
『ポッド、まだ納得いかない?。』
「報告:どこか言い知れぬ不安のようなものが付きまとっている」
『悪い予感がするって?。らしくないよー。』
10Dは珍しく主観的に述べるポッドを抱き寄せて、心配することはないと宥めた。
あえて最悪の事態は考えまいと10Dは明るめに振る舞う。
どうせなら楽しい方がいいのだ、と機械生命体の群れに近寄って列車の反応を待った。
十数分経った頃、キイィィン……と車体から鈍い音が聴こえた。
「ア……アア……ウアァ………」
続いて籠った声を出す。思考が纏まらないのか言葉になっていない、ただの音のような声だった。
機械生命体達が近寄り、車体に声を掛ける。
「大丈夫カ? ネットワーくカラハもウ外レテイルか?」
「マダ話セナイカ。メンテナンスヲシテヤラネバ……」
「レッシャ! レッシャ!」
「走ッテ! 煙噴イテ!」
大人びた機械生命体の横で幼げな機械生命体がキャッキャとはしゃぐ。
車体の方は相変わらず自我を感じられないような反応しか見せない。
でも活動を始めたのは確かだ。
10Dは少し期待しながら機械生命体と車体の様子を見守った。
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