第3章 平和主義者
風なら馴染みがあるだろう、とポッド107が10Dや機械生命体達にも理解出来そうな例えを用いる。
だが機械生命体に風を感知するセンサーが付いているか不明な為、伝わっているかは定かではなかった。
「推測:この車体は蒸気機関と呼ぶに相応しい構造をしていない為、燃やしても走ることはない」
それを聞いて機械生命体達は悄気たような反応を見せた。
見兼ねた10Dがポッド107に再び問い掛ける。
『……他に方法はないの?。』
「報告:該当する項目を検索中」
10Dは自分で訊いたもののあまり期待はしていなかった。ただの金属板の貼り合わせを乗り物として動かすなんて、きっと人類にも無理だろう。
暫く沈黙を続けたポッド107が、端末に画像を映し出した。
「報告:ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどのオイルを燃料とする内燃機の構造がやや現実的ではあるが、1から造るとなると機械生命体にはかなりの難題である」
『うーん、そっか……。部品とかを造る工場も機械生命体用のしかないだろうし………あっ機械生命体の構造を真似るのはどうかな。』
閃いた、と10Dが提案する。
『速く走るかどうかは分からないけど、内部に機械生命体の構造を応用したものを仕込めば動かすことは可能になると思う。』
周りの機械生命体達に説明すると、少し困ったような態度を取った。
「ソレ……モウヤッテル」
「見エナイ箇所デはアリマスガ、既ニ私達ノ中身と同ジようナ造リヲ取リ入レてイルノデス」
「デモデモ、材料ガ足リナクテ……」
モジモジしながら機械生命体は控え目に話す。
『材料?。何が足りないの?。』
「機械生命体ノコアガアレバ動くト思ウ!」
本を返してと言うように10Dの手に向かって腕を伸ばしながら幼げな機械生命体が言った。
『そっか、機械生命体のコアなら私が持ってるからそれをあげる。』
「ホント? アリガト、オネーチャン!」
「アリガトウゴザイマス。生キてイル仲間カらコアヲ取ルノハ気ガ引ケルモノデシたのデ……本当ニ助かりマス」
『今、レジスタンスキャンプに置いたままにしてるから取って来るね。』
機械生命体達に手を振り、車内から降り元来た道を駆け出した。
『何だか楽しそうなことになって来たね。』
「推測:敵性反応を持った機械生命体から採取したコアの使用は、新しい機体にセットした際に暴走する可能性がある。推奨:計画の中断」