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よるがあけるよ

第3章 平和主義者


「ドウカ……ドウか、殺サナイデ。僕達ハ、君達アンドロイドに危害ヲ与エヨウだナンテ、思ッテナインデス……」
一番前の機械生命体が床に手を突いて頭を下げた。
土下座だろうか。
他の機械生命体もおずおずとした声で喋り出す。
「私達はタダ平和ニ、安全ニ暮ラシテイたいダケナんデス……ココデ人類ノ乗リ物ヲ造ッテ遊ンデイタダけナンデス……許シテクダサイ……」
その場の機械生命体達が全員、同じように頭を下げだした。
10Dはその様子を見て1種の恐怖を覚える。
"罪悪感"という新しい感情が芽生え始めていることを自然と自覚出来た。
『……ポッド、戻ろう。』
「疑問:機械生命体の排除の放棄」
ポッド107がガトリングの銃口を剥き出し、機械生命体達に向けた。
排除しろと催促している。
ポッド107がそう言うのなら殺すべきなんじゃないかと迷うが、機械生命体達の怯えきった様子を見るとどうにも殺した後に悔やみそうな気がする。
それかもう吹っ切れてこの先どんな残酷な判断でも躊躇せずやりそうな気もする。
義体が壊れるのはまだ良いけれど、感情まで壊れるのは嫌だった。
10Dはポッド107の銃口を塞ぐように手を当て、そのまま機械生命体達の方向から反らす。
『……敵意のない機械生命体は殺さなくていいよ。いつもと同じ。』
そうだ。廃墟都市をいつも上の空のようにほっつき歩いている機械生命体達にだって、何か目的がない限り私たちは積極的には攻撃を仕掛けないじゃないか。
ただ喋るか喋らないか、感情があるかないかの違いでしかない。
だったら、殺す必要なんて微塵もない。
「推奨:機械生命体の排除。機械生命体及びエイリアンは人類の故郷である地球を奪った仇であり、永遠の敵である」
『もうっ……私が殺さないって言ったら殺さないの!。』
車内から出て行こうと踵を返す。
ポッド107の意見を却下するのは久し振りだ。
正しいことを示してくれているのは分かるけれど、今回ばかりは10Dは聞き入れたくなかった。
「ア……アノ……」
背後で機械生命体の声がして、顔を向ける。
「見逃シテクれて、アリガトウゴザイマス……アノ、ヨカッタらマタ来テ下サイ。僕達ハ機械生命体同士ダケデハナク、アンドロイドとモ仲良クシタイノデ……」
再度頭を下げる機械生命体の言葉は先程より落ち着いた調子だった。
まだ少し怯えを孕んではいるが、殺される恐怖は薄れている。
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