第2章 壊された電灯
『(悔しい……でも、ない。……よく分からない)。』
10Dは14Oへの気持ちを考える。
感謝をベースにした別の何か。
自分だって14Oの役に立ちたいのに、それが出来ずに空回りする。
プレゼントは何にしよう。このままじゃ永遠に何も渡せない。
なにしろ気持ちを別の媒体で表現しなくてはならないのだ。何だったら伝わるんだ。何をしたら14Oは喜ぶんだ。
――無事で居てくれたら、なんてそんなの私の伝えたい気持ちの形になる気がしない。
10Dはふて寝するように枕を抱いて顔に押し付けた。
人類のデータベースで贈り物の例を見たけれど、花や食事などの馴染みない物ばかりだ。
ここの地域は花はおろか、まともな植物すら生えていない。夜の地帯では光合成のしようもなく、動物も植物も日光を必要としなくても生きていけるよう進化した種類しか残らなかった。
簡単に手に入ったとしても、空気のほぼ無い場所に持って行かないと渡せないため有機物は基本プレゼントに選べない。
溜め息を吐きながらあれでもない、これでもないと思考を巡らせているとプラヴァが部屋に入って来た。
「ポッドの強化終わったから、次10D来て」
『あ、うん。すぐ行く。』
起き上がり、プラヴァの後を追いかける。
メンテナンススペースに着くと、作業台に座っていたポッド107が10Dを見るやフワリと浮き上がり近寄った。
「報告:強化完了」
『あんまり見た目変わってないね。』
「基本機能は全部向上してるから心配するな。見た目は変わらない方がいいだろう」
ポッド107の機体を触りながら10Dは「まぁね」と返す。
「ほら、10D。さっさと寝台に横になりな。あと今度はポッドもライトを点けて照らしてくれ」
「了解」
ポッド107に照らされる。ゴーグルを外したので眩しくて堪らない、と10Dは目を細めた。
「スリープモードの準備しといて」
『わかった。』
10Dは言われるままに瞼を閉じ、休眠状態に入る。
暫くするとプラヴァが声を掛けてきた。
「……始めるぞ」
頷いて応える。久し振りのメンテナンスだから、少し落ち着かない。
「おいポッド、10Dの耳に付いているのは何だ?」
「回答:GPS搭載の耳飾り」
「ふぅん……GPSねぇ」
聴覚だけがはっきりとしている。どうやらメンテナンスの合間でプラヴァとポッド107が会話をしているようだ。