第2章 壊された電灯
1時間位かかると聞いて、10Dはキャンプのヨルハ部屋で14Oに連絡をすることにした。
すきま風があるようで、部屋の隅にある蝋燭がゆらゆら揺れている。
『こちら10D。14O、さっきの通信の、機械生命体から襲撃される直前に言い掛けてた続きをお願い。』
〈こちら14O。「引き続き周囲の調査をお願いします」と言うつもりでした〉
『……あれ、それだけだったんだ?。』
次の任務があるんじゃないかと思っていた10Dは拍子抜けした様子で端末の14Oに訊く。
〈特にこれと言った任務はまだ何も入ってきてません。担当地区を見て回り、資源を集めたり機械生命体を倒したりしておいてください〉
『了解。』
14Oはいつも通りに喋っていた。落ち込んでいる姿を見たくなかった10Dは安堵するが14Oの冷静沈着で思っていることをなかなか表に出さない性格なのを知っている為、普通を装っているだけなのではと勘繰る。
〈今回の依頼の報酬はメールボックスに送っておきましたから、後で確認をお願いします。他に連絡や質問等がなければ、以上で通信を終了します〉
『あっ、待って。……ちょっとだけ待って。』
〈何でしょうか〉
言葉はまだ出てこないし、出たとして今更言ってもなぁと10Dは思う。代わりにポッドから言われた事を応用してみようと考えた。
『……ねぇ、14O。何か欲しいものとかない?。』
〈欲しいもの……?〉
突然の問い掛けに14Oは首を捻る。
『ほら、好きなものとか、地上にしかないもので気になってたりするものとか、ない?。』
〈……いいえ、特にはありません〉
14Oが喜ぶ贈り物が何なのか分からないなら本人から訊けばいいと考えた10Dだが、返答がプレゼント選びの難易度をより一層上げてしまった。
『そ、そうなんだ……。』
〈私はただ、あなたが無事に過ごしていれば満足です。くれぐれも無茶や危険な真似は止めてください。それだけです〉
穏やかな声で14Oが言う。
『うん……ありがとう、14O。』
10Dは膝の上で手をギュッと握り締めながら答えた。
情けない。
通信を切った後の薄暗い部屋で10Dはベッドに突っ伏してそう思った。
『(情けない……不甲斐ない……?。人類はこの感情を何て表現したんだろう)。』
自分は何も14Oにしてあげれてないのに、14Oはいつも言葉でも行動でも自分へ何かしてくれるのだ。