第2章 壊された電灯
『……えーと、まずはアイビスに報告に行って、それから14Oに連絡を入れてー……。』
「推奨:メンテナンス」
『あ、そうそう。メンテナンスも。』
予定を指折り確認して、10Dは早速リーダーの部屋へ向かった。
『アイビス、戻ったよ。』
「あぁ、おかえり。成果の程は?」
本にしおりを挟みながらアイビスが振り返る。
『何か喋る機械生命体が居てね、そいつから聞いたんだけど……機械生命体の形の電灯のことを「悪趣味なアンドロイドによってオブジェにされてしまった仲間」って捉えてるみたいで、それを壊すのはオブジェとしての役目を終わらせる為って言ってたよ。』
「なるほどな……我々自身が設置した物は壊れたら撤去するから、機械生命体の行動は合理的だ。だが、機械生命体が言葉を発し、しかも死に晒しを屈辱と考える概念があるとは思いもしなかった」
アイビスは信じられないといった様子で口元に手を当てた。
「前までは単純な動きしかしないような奴ばかりだったんだが……最近は特殊な個体が増えてきているな」
「推測:機械生命体の進化」
『進化?。』
ポッド107の言葉に10Dが首を傾げる。
「進化……か。そういう考えも有りだな」
「報告:先程遭遇した機械生命体には、まるで感情があるかのような発言や行動が多く見て取れた。それに復讐という、ただの機械にはおよそ出来ない行為にも及んでいた。推測:本来持っていなかった能力を長い時間をかけ体得した。もしくは今の今までアンドロイド側が気付けていなかっただけ」
「隠していた可能性もあるのか? じゃあ何故今頃……」
「報告:機械生命体達はネットワークで繋がっていて、ネットワークでの通信を元に命令やデータの共有が成されているらしい。しかし中にはネットワークから外れてしまった個体も複数存在する、という情報がある。推測:特殊な個体とは、そのネットワークから外れて自由な行動を始めた個体のことではないか」
ポッド107が2機に淡々と説明する。
アイビスは「その可能性もある」と頷き、10Dは『へぇ……?。』とポッド107とアイビスを交互に見た。
「まぁ、我々は数百年生きていても未だに機械生命体を理解出来ていなかった訳だな……。取り合えず、言葉を扱ったり高度な思考が出来る機械生命体が存在するという事を、他のアンドロイド達にも伝えておく。10D、ポッド、貴重な情報をありがとう」