第2章 壊された電灯
直らないと匙を投げられても、改善の努力はするべきだ、と10Dは改めて思った。
「……ちゃんと付いてきなさい。考え事ならキャンプでいくらでも出来るわ」
走っていると、5Bから首根っこを掴まれて止められた。
『あれ?。』
10Dは先導してくれていた筈の5Bがいつの間にか背後に居るのを見て、はぐれかけていたのだと気付く。
「何も考えないのも駄目だけど、考えに集中し過ぎて注意散漫になるのは良くないわ。ポッド036、107と一緒に10Dを見張っておいて」
5Bのポッド036が3機全て10Dの周囲についた。
4機の随行支援ユニットに囲まれ、複雑な気分になりながら10Dは5Bと共にレジスタンスキャンプに向かう。
「……10D、あなたどうしてGPSの信号なんて出してるの?」
『えっ、あぁ、5B知らなかったんだ……。司令官から付けるように言われたんだよ。』
知らないのに来てくれたんだ、と10Dは少し驚く。
「プラグイン・チップにそんなのあったかしら」
『ううん、司令官が特注してくれたみたい。耳に付けてるの。』
10Dがゴーグルをずらし5Bにイヤーカフを見せる。
もう大体痛みは薄れて、ほとんど気にならない位だ。
5Bは物珍しげに耳に嵌め込まれた飾りに目を向ける。
「それが発信源だったのね……マップにいつの間にか"10D"って書かれたマークが入ってたのよ。任務の合間にマークの場所を確かめに来たのだけど、まさかそのままの意味だとは……」
5Bがマップを端末に表示し、件のマークを指差した。
丸い記号の中に確かに"10D"と書かれている。
『あーね、こんな感じなんだ……ちょっと恥ずかしいな。』
「まぁ恥ずかしいわね。何処に居ても仲間に場所が割れてしまうんだもの。でもそのおかげで助かったんだから我慢しなさい」
5Bに嗜められながら進んでいくと、やがてレジスタンスキャンプに着いた。
『案内ありがとう、5B。』
「どういたしまして。さすがにキャンプ内で迷うことはないわよね?」
『もー、からかわないでよ。』
少しムッとした顔になった10Dを見て、5Bは静かにクスリと笑う。
「……じゃあ、私はもう自分の任務に戻るからここでお別れよ。またね」
『うん、わかった。任務頑張ってね。』
自身のポッド3機を連れてレジスタンスキャンプから出て行く5Bの背中に手を振り見送った。