第2章 壊された電灯
今の14Oにどんな言葉をかけてあげればいいのか皆目検討がつかないが、自責の念にかられないでほしいと10Dはただ思う。
「……もういいじゃない。今回は死ななかったんだし、お互い次に活かせばいいでしょ? また何処かから機械生命体が攻撃してくるかもしれないし、早く安全な場所まで移った方が良いわ」
5Bが周囲を警戒しながら言った。
〈……そうですね。一旦通信を切っておきます〉
『14O、また後で連絡するね。』
〈はい……10D、迷わないように気を付けてキャンプに戻ってくださいね〉
『うん、ポッドと5Bが一緒だから大丈夫だよ。』
14Oに向けて笑顔で手を振り、通信を終わらせる。
10Dは落ち込んだままの14Oが気にかかったが、気の利いた励ましの言葉など思い付かなかったので、微笑み掛けることしか出来なかった。
『…………うーん。』
何か良い言葉は無かったのかと10Dは納得いかずに首を捻る。
「ほら、行くわよ。迷いそうなら手でも繋いで引っ張ってあげるから」
『……いや、遠慮しとく。』
迷い癖もいつかは直さなければ、と10Dは先導する5Bの後を追いながら考える。
『(14Oにもポッドにも余計な負担をかけないように、一人で何処にでも行って戻ってこれるようにならなきゃならないんだ……)。』
いつもマップに目的地を表示するだけでは迷ってしまう10Dに必死に道案内をしてきた2機の苦労を10Dも何となく分かっている。
そもそも10Dがいつも単体行動なのも方向音痴が原因だった。
他の隊員のように要領良く道を覚えられないせいで作戦部隊に入れてもらえない。気が付いたら1機居なくなってたなんて事態があったなら探す手間がかかる上に、作戦に支障をきたし混乱を招くからと司令官から外されたのだ。
その時に地理に詳しいオペレーターと最新の随行支援ユニットを割り当ててもらったが、それでも10Dの迷い癖は手に余ることも少なくなかった。
それについて、10Dも悪気がある訳ではないので申し訳なく思うことも多々あった。
最近でこそキャンプ周辺は大まかに把握出来ているが、やはりマップやポッド無しではスムーズに行動できない。
14Oも他に仕事があるのに、頻繁に10Dに連絡を入れ道に迷って困ってないかを確認してくれている。
ちゃんと方向音痴を克服出来たなら、こんな厄介は無くなる筈だ。