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よるがあけるよ

第2章 壊された電灯


人工皮膚はリアス式海岸のように破れ、回路は飛び立つ鳩の群れのように四方八方へ飛び散り、コードは食べかけの糸蒟蒻さながらに千切れる。
辺りは多量のオイルで真っ赤に染まり、14Oはバンカーで泣き叫び復讐の為に自身の機体をB型へ移行することを決心し、ポッド107は随行対象を失ったショックで全データの削除を開始したのち鬼畜な弾幕クレジットで延々救済もなく打ち砕かれる。
――そんな未来が待っている筈だった。
グシャッと何かがめり込む金属音がした後、細い溜め息が10Dの頭上で漏れる。
「……もう、ちゃんと全部死んだかどうか確かめてから通信しなさい」
ゆったりとした穏やかな口調で誰かが声をかける。
『…………?。』
「確実に殺される」と思い込んで諦めていた10Dが声を辿って、すっかり潰れてしまった機械生命体からおそるおそる視線を上にやった。
『……あっ、5B!。』
「マップに10DのGPSの位置情報があったから何となく来てみれば………これ全部10Dが倒したの?」
『そうだよ。でも最後の最後で気を抜いちゃったみたい……。』
5Bの手を借り立ち上がる。さっきまで見上げていた機械生命体が今となってはガラクタに成り果て足元に転がっている。
〈……5B、私の担当ヨルハ機体10Dの窮地を救ってくれたことを心より感謝します〉
端末からオペレーターが5Bに声を掛けた。
「えぇ、間に合って良かったわ」
武器に付着した汚れを払い落としながら5Bが返す。
〈……こんなことになったのも私の不注意のせいです。危険地帯からの通信だと知った上で会話を続けてしまった……! ごめんなさい、10D!〉
『14O……。』
申し訳ない、と頭を下げるのを見て10Dが端末に映る14Oに手を伸ばす。当然伸ばした先には端末があるだけで14Oの本体はない。
やり場のない手をそのままに、10Dは14Oに言う。
『謝らないで、14O。そもそも私がここで休むついでに通信したのが原因だから、14Oは悪くない。そんな悲しそうな顔しないで。』
「報告:当機ポッド107も近くに居ながら全くの不注意であった。不覚」
普段なら無表情を貫いている筈の14Oが、他者に見えるカタチで10Dの無事に安堵し、そして10Dを危険に晒した自身を悔やんでいる。
抑えられることのない感情を目の当たりにし、10Dは少し戸惑いながらも14Oの気持ちを理解しようとした。
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