第2章 壊された電灯
周辺の機械生命体は残りほんの数体だ。
『一気に畳み掛ける。』
「御意」
ポッド107のプログラムをスローに切り替え、機械生命体達の動きをほぼ封じた状態にする。
10Dはその隙に剣で一体一体殴るように斬った。
暫し静まり、爆発音が響く。
衝撃で機械生命体の部品が辺りに飛び散った。
『………はぁー、やっと全部倒せた。』
10Dは疲弊した様子で地面にへたり込む。
「推奨:キャンプかバンカーに行きメンテナンスを受ける」
『キャンプでいいや。もう少ししてから戻ろう。』
無数の機械生命体の残骸に囲まれたまま、オペレーターとの通信を始める。
端末が少しローディングした後、14Oの顔が表示された。
『こちら10D。14Oに依頼の報告をするよ。』
〈お疲れ様です。どうでしたか?〉
相変わらずお古のゴーグルを髪に結わい付けている14Oを見て、10Dはポッド107からのアドバイスを思い出す。
『…………。』
けれど何も考えていなかったため別の機会に持ち越すことにした。
〈黙り込んでどうしたんですか? 前回私が言った「黙りなさい」はもう無効ですよ。それとも何か疚しいことでもあるんですか」
『……ううん、何でもない。』
首を小さく左右に振り、10Dは状況報告に集中しようとする。
『あのね、レジスタンスキャンプのアイビスからの依頼を請けてたんだけど、その時に喋る機械生命体に遭遇したよ。』
〈あら、まだ依頼してから丸2日と経っていないのに仕事が早いですね。偉いじゃないですか。きっと司令官からも称賛のお言葉を頂ける筈ですよ〉
『ありがとう。戦った時のデータを送るね。音声もちゃんと撮れてると思う。』
10Dは14Oの扱うコンピューター宛てに戦闘データを送った。
〈どうも。このデータは私が確認した後で司令官や他のヨルハ隊員達にも共有しておきます。10Dは引き続き周囲の調査を………ッ後ろ! 危ない!!〉
突然画面越しに14Oが恐ろしい剣幕で叫んだ。
叫ばれた言葉の内容より、怒鳴り声に驚いて肩を大きく震わせた10Dは反応が遅れてしまった。
『(…………え)。』
背後には機械生命体が居た。
会話に集中するあまり10Dもポッド107も気が付けなかったのだ。
座ったままの10Dは避ける動作も忘れて唖然と機械生命体を見上げた。
ギュイイン、と機械生命体のサーキュラソーが音を立て10Dの体を無惨に切り刻む。