第6章 目覚め
ポッド107が理由を淡々と告げる。
それを聞いたピジュンは力が抜けたように10Dの肩から手を下ろした。
「…………そうか」
『えっと………。』
虚ろな目になったピジュンを心配し、10Dは言葉を掛けようとする。が、どう慰めていいのか分からずまた中途半端な沈黙が生まれる。
「……結局あんたらヨルハってのは規則だけで動いてる、血も涙もない連中なんだな」
失望した、とでも言いたげな眼で10Dを睨むとピジュンは足早にその場を去っていった。向かったのはリーダーのアイビスの部屋がある方向だ。
おそらくデボルとポポルの死を報告しに行くのだろう。
「……否定:血も涙もないのは全てのアンドロイドに共通することであるから、機械同士で使うべきではない。推奨:別の表現を用いる」
『涙なら辛うじて出るよ……何故かは知らないけど。』
いつもなら間髪入れずに訂正をするポッド107が珍しく本人が居なくなってから発言した。
空気を読んだのかは定かではないが、10Dはそっとポッド107を撫でておいた。
理不尽に憤りをぶつけられたような気もするが、ピジュンも多分どこに感情をぶつければいいのか分からないだけだ。10Dと処刑役のヨルハは全く別の個体だけれど、同じヨルハを名乗るなら責めてよしとなってしまうのだろう。
『…………。』
どことなくデボルとポポルの立場に似ているな、と10Dは小さく溜め息を吐いた。
一部の地域を管轄していた双子のアンドロイドの暴走により、全世界のデボルとポポルが災禍のような扱いを受けているらしい。
直接的な関係はないもののリスクと責任を負わされ冷遇される状況が、いずれヨルハにも起こるのかもしれない。
そう思うと、やるせない気持ちになった。