第6章 目覚め
任務内容が物資の収集に戻ってから1週間が経った。
あれ以来10Dはバンカーに戻っていない。
元に戻った日々をそれなりに過ごしながら任務をこなしていた。
その日も滞りなく仕事が済み、リーダーの部屋に物資を預けて14Oに任務達成の報告をメールで送る。
メールボックスから離れてヨルハ部屋に入ろうとしたとき、落ち込んだ様子で戻ってきたレジスタンスを見かけた。
ピジュンだ、と10Dが一瞥しながら部屋のドアを開ける。
確か月1程の頻度でピジュンはデボルとポポルに会いに行っていたはず。日頃の機械生命体の動きや周辺環境の変化などの情報交換を主な目的として交流しているのを知っている。
司令官からの命令で10Dはデボルとポポルの住み処のある東側に入れないため、双子のその後の様子をピジュンから聞き出そうと考えた。
『ピジュン、やけに元気がないね。何かあった?。』
近付いて話し掛ける。声に反応し力無く振り返ったピジュンは、10Dを見て少し驚いたように後退りをした。
「あ……あぁ、あんたか。すまない、少し気分が悪くて」
無意識に厭がってしまった態度を言い訳するようにピジュンが眉間の辺りを押さえる。
『ねぇ、私デボルとポポルのこと聞きたくて……今日会ってきたの?。』
10Dが聞くと、ピジュンは目を伏せて首を振った。
「……死んでた」
『え……。』
「デボルとポポルと、あとヨルハっぽい背の低い男のアンドロイドが家のすぐ傍で倒れてた。男の方はバラバラに壊されてて、デボルとポポルは……首と腹部に深い傷を負わされてて………機械生命体とは明らかに違う襲われ方だった」
ピジュンの話を聞いて犯人に心当たりのある10Dは、旧12Sのついでに双子も殺されてしまったかと小さく唇を噛んだ。全く懸念していなかった訳ではないが、実際に起こった今、少し後悔が滲む。
「なぁ……やったのはヨルハだろ? デボルとポポルはそっちの問題に巻き込まれただけなのに、何で殺されなきゃいけなかったんだ?」
『それは………。』
いきなり両肩を掴まれて詰問を受ける。咎めるような眼には余裕が無く、悲しみと怒りの混ざり合う相手の形相に10Dは言葉を詰まらせた。
「推測:デボルとポポルは指名手配対象の隊員を匿っており、2機は執行役が隊員を処罰する際に激しく抵抗した可能性がある。その場合であればやむを得ず加害に及んだと考えるのが自然」