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【YOI男主】激突!皇帝VS風雅人・長谷津冬の陣

第3章 超局地的寒気団、襲来。


純が長谷津に到着した日の夜。
少量の酒が入り互いの心の鍵も僅かに緩んだ勇利と共に、普段は決してしないだろう話題にも触れ合っていた。
お互いがそれぞれに抱いてた羨望や嫉妬、過去の試合の思い出に加えて、勇利の口から先日のGPFにまつわる彼が当時引退を考えていた事についても聞かされた。
勇利が引退を考えていた理由は、年齢による選手としてのピークに加え、日本人選手が競技を続ける事への難しさ等から、純も頭では理解していた。
そして、当時はまだ辛うじて「敬愛」の域に留まっていたヴィクトルの時間をこれ以上奪いたくないと、彼を銀盤の世界へ返したかったという事も。
(その後、FSの終わった夜に「俺だって1人の人間なんだ!勇利は本当に俺の事、ただのコーチとしてしか思っていないの!?俺は、ずっと前から勇利の事を…!」と美形台無しな泣き顔のヴィクトルから、熱烈な告白にも近い想いをぶつけられたのだが)
「フリーを終えて、ヴィクトルの口から競技復帰の言葉を聞いた時も、正直僕の心は動かなかった。だけど、その後のユリオの演技を観て…だから、あの時のユリオは僕の…」
ほろ酔い顔の勇利の口から零れた少年の名と、その後で彼が発した単語を、純は何処か羨ましそうに聞いていたのだった。

純から話を聞いたユーリは、これ以上ないという程目を見開いた後で、彼から顔を背けた。
「…大丈夫か?」
「何でもねえよ。焚き火の煙が目に染みただけだ!」
声を震わせながら、せわしなく目をこすっているユーリの後ろ姿を、純は暫し見守る。
「この話、僕が言うたんは内緒な。いつか、勇利の口から君に伝わる日が来ると思うから」
「…そんな日、来るのか?」
仄かな期待と大きな不安に揺れたユーリの声に、純は少しだけ彼に近づくとその丸まってしまった背を優しく撫ぜる。
「それには君が、これからもっと大きならんとな。スケーターとしても、人としても」
穏やかだが何処か諭すような純の言葉を、ユーリは心の中で噛み締めていた。

「もうすぐ純達戻ってくるって」
目を覚ましたヴィクトルがベッドの下に散乱する服を拾っていると、マッカチンが近付いて来た。
手入れの行き届いた毛並みを褒めた後で、それが純によるものだと判ると、ヴィクトルは少々複雑な顔をした。
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