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吾輩は猫たん

第2章 香ばしい香りに誘われて


涼やかな縁側、温かい日差し。
さわさわと吹く風に揺られ、桜の木から花弁が舞っていた。

あれからまだ、数日しか経過していない。



くあ~と大きな欠伸をして、黒く小さい身体をぐぅーっとしなやかに伸ばし縁側で寝ていた葵は起きあがった。
(ん〜たくさん寝た!!)
トンと小さな音を立て縁側から降りた葵は、庭の池に近づいた。花弁が浮いている水に躊躇なく小さな舌を出し、渇いている喉を潤す。
(美味しい〜っ!)
水を飲み終わり、今度は顔を綺麗にする。

やっぱり女の子なんだから、身だしなみくらい整えないとね!

身だしなみを整えた葵は、しずしずと歩き出す。
天気も良いし、今日はお散歩日和!
うにゃうにゃと独り言を呟きながら、日本庭園風のお庭からぴょんと塀を越えて外へ出た。

(さーて!今日はどこに行こうかなー?)
お天気良好!
気分上々!
身だしなみオッケー準備万端!

(Let's go!)



人々が歩く街中。葵は人間に踏まれないよう、塀やパイプの上を歩く。
彼女は昔、人だったのだ。だからはじめ、昔のように人の中を歩いてしまった。人混みの中を歩いていたら、足を踏まれたり人の足にぶつかったりと散々な目にあった。
可愛い可愛い猫たんの身体に痣が出来たし、自分よりもとても大きな人がちょっぴり怖かった。それからというものの、人よりも少し高めの位置を歩くようにしたのだ。
(ふふん♪これなら踏まれないし痛くない!私って頭良いわぁ〜)
人だった頃、高い所が苦手だったのに、この身体になってから高い所が不思議と平気になっていた。初めは躊躇したが、お母さんに「登れ」と威圧的に木登りの練習をさせられたのは今ではいい思い出。

ふと良い香りがしたので、葵は立ち止まりクンクンと匂いを嗅ぐ。
(美味しそうな匂い〜♪)
もうダメ、私お腹空いてきちゃった!
香ばしい香りにつられて、お腹がグゥと鳴ってしまい恥ずかしい。でもお腹減ったと思ったら、もう我慢出来なくなってしまった。ああ、なんて正直な身体…!!と思いつつも、ふらふらと自分の本能に従ってしまった。

それがまさか奇跡的な出会いをするとも知らず。
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