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吾輩は猫たん

第2章 香ばしい香りに誘われて


彼は今日、たまたまそこにいた。
たまたまというか、仕事だった。
仕事が終わり、さて帰ろうと思った矢先、お腹がグゥと鳴った。
お腹減った…。
「お腹も減ったし何か食べよう」
そう独り言を呟き、香ばしい香りのするオープンカフェへと足を運んだ。


早速注文し、自分の惹かれた香ばしい香りの元が目の前に。早速手に取り、付属のバターをつけて食べる。
「うん、美味しい」
彼が惹かれた香ばしい香り、それはパンだ。焼き立ての香ばしい香りに、パンの熱で溶けるバター。口の中でじんわりと麦の香ばしい香りがする。
パクパクとパンを食べていると、ふと視線を感じた。
(…?)
視線の先には小さな黒い生き物。その黒い生き物の目付きに少し親近感が湧いた。じっとこちらを見ているが、ふと自分を見ている訳ではないと気付く。…パンだ。
「食べる…?」
あまりにも物欲しそうにしていたので、彼はつい声を掛けてしまった。
彼の言葉に耳をピクピクさせ、尻尾をピンと上に伸ばしている。なんだか目がキラキラしているように見えるが気のせいだろうか?そのままその黒い生き物は、彼の座るテーブルの椅子にぴょんと飛び乗った。お行儀良く椅子に座り、彼の手をじっと見た。

明らかなクレクレサイン。

手にしてきたパンを一欠片千切って目を輝かせる小さな生き物の目の前に置いてあげる。
「うにゃあ〜」
人間のように、「頂きます」と言っているような気がした。…そんな馬鹿な。相手は猫だ。
美味しそうに猫が食べ終わると、まだ足りないと言うように彼を潤んだ目で見る。
仕方なくまた一欠片千切って目の前に置いてあげる。
その繰り返し。
彼は少し楽しかったらしく、暫くその作業を続けていた。

「お客様、お待たせしました!」
可愛らしい制服を来た女性店員が、出来立てのハンバーグを持ってきた。お肉とデミグラスソースのいい香りが食欲をそそる。
彼は猫にパンをあげるのを辞め、ナイフとフォークを手に取った。ナイフでハンバーグを切ると、ジュワーと美味しそうな肉汁が出てくる。
切り分けたハンバーグを一口パクリ、と口にした。
「なうぅーー!!」
突然甘える声がして、彼はそちらに目をやる。
先程までお行儀良く座っていた猫が、ちょんと片足をテーブルに乗せていた。

(食べたい食べたい!ハンバーグうぅー!!)
猫は口を半開きにして目を輝かせ、彼へクレクレサイン。

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