第1章 序章 はじめて出会った時
しばらく電車に揺られていると斜め前に座っていたあの人が電車から下りた。
私が通う学校の最寄り駅の一つ前の駅で下りた。制服を着ていたのであの人も学生なのだろう。
そう考えていたときふとあの人が座っていた席が目に入った。
そこにはあの人が、読んでいた難しそうな小説が落ちている。私は無意識にそれを拾っていた。
やがて電車は私が今日から通う学校の最寄り駅に着いた。
一瞬あの人が落とした本を駅に届けようかと思ったがあの人はこの駅の前で下りた。なのでこの駅に届けても意味がない。
もしあの人が毎日あの時間のあの電車に乗るのなら
私がまたあの時間のあの電車に乗れば
渡せる
そんな変な確信を寄せて私はその本を自分の学生鞄の奥底に入れた。
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時間が変わり学校帰り。
クラス割などの発表があったが私はこの学校には知り合いは愚か前学校で一緒だったこたちも違う学校のためおらずクラス割なんて見てもほぼ意味がない。
入学式のみのため誰かとしゃべることもなく帰ってきた。
そのうち友達もできるだろう。そんな投げやりな心情で帰りの電車に乗った。
電車に揺られていると電車のドアが開いた。学校の最寄り駅からみて一つ目の停車駅。
すると私が座っていた方向の逆の方向の扉から朝のあの人が乗ってきた。
私は驚いた。
まさか帰りの電車でまた出会うなんて。
驚きながらも朝の本のことを思い出した。
[これ、渡さなきゃ。]
そんなことを思いながらあの人の方に足を向けた。