第1章 序章 はじめて出会った時
あれは春の出来事。
私が初めてあの人に出会ったあの日。
小雨が降り正直入学式には似合わない天気で。
気分が沈みながらも私は学校の最寄り駅を通る電車に乗った。
田舎の電車なので混むこともない。地元就職が多いせいかスーツを着たサラリーマンさえもあまり乗っていない電車。
車内には疎らに数人椅子に越しかける人がいる程度。
私は隅の方に座った。すこし離れたところに制服を着た男の子も座っている。整った顔をしたその人は小さな小説のようなものを読んでいて、周りにも本を読んでいたりスマホを見つめていたり。
この電車は停車駅の間隔が遠い。そのため本などを読んでいる人が多いらしい。私も母にサラっと聞いた程度だから全く知らない。話を聞いた程度だ。母には電車の中で暇だからと本を持たされた。
だが開いてみると全くわからない上に読む気力さえも失せる文字量。本など普段全く読まない私にはもはや苦痛でしかない。周りは皆何かしらしているがスマホを開くにも充電がなくなったら困る。なので本を読んでいるフリをすることにした。