第5章 恋煩い
先日、ちょっとした事故で大我に押し倒され…というか、完全に私の不注意だけど。まあ、そんな事があってから妙に大我を意識しちゃって、いつも通り変わらずマネージャーの仕事を手伝ってくれる大我との距離感が分からず、大我を避けている。大我が近くにいるとドキドキするし、大我の笑った顔を見ると胸がきゅうっと苦しくなる。初めて体験する感覚。この気持ちの正体が分からず、自分一人じゃどうする事も出来ず、幼馴染みである鉄平に相談した。すると、深刻そうな顔をする鉄平。
「…遥香、病気じゃないのか?」
「やっぱり!?」
私も何かの病気じゃないかと思い不安に思っていた所だったから、鉄平にそう言われ、病気かもしれないという気持ちは確信へと変わった。
「やだどうしよう…!折角帰国してきたのにまた入院なんて…!私、皆と全国制覇したいのに!それに、」
鉄平と同じチームで全国大会に挑む最初で最後の機会。それを病気なんかのせいで無駄にしたくない。鉄平は去年痛めた膝のせいで、ウィンターカップの後はアメリカで膝の治療をする事が決まってる。こんな事ならアメリカ留学を今年にすべきだった。あ、でも留年したし、今年ももう一回アメリカ留学行けるかな?でも、長期留学は誠凛のカリキュラムに入ってないし、一緒にアメリカに行っても先に帰国しないといけない。それに誠凛バスケ部は鉄平と順平の二本柱。その柱が一本無くなるという事は、他のメンバーの精神的支えが一つ無くなるという事。それを主将とは言えど、後輩の順平と監督のリコちゃんに任せてしまうのは心許ない。去年大変な時期に一緒に居れなかったのだから今年こそは皆の傍でちゃんと皆を支えたい。そして何より大我と離れ離れになってしまうのは辛い。後輩は皆可愛いし、平等に好意を向けてるつもりなのに、どうしてか大我にだけ気持ちが偏ってしまう。