第2章 合宿
「あいたたた…。」
目が覚めると外はすっかり陽が落ちていた。痛みを堪え体を起こすと、ズキリと右足が痛む。が、立てない程の痛みではない。早く戻らないと流石に皆心配してるだろうな。そう思い、顔を上げた。
「…うそ、」
目の前に広がる綺麗な光に目が奪われた。月の光に反射して輝く川。そしてそれを更に輝かす蛍の光。
「綺麗…。」
こんな所に蛍がいるなんて。蛍を見たのは初めてではないが、こんなに沢山の蛍を見たのは初めてで、その美しさに足の痛みは何処かに飛んでいった。これ、皆に見せたら喜ぶんじゃないかな?そう思って、私は合宿所へと足を早めた。幸いにも直ぐに遊歩道に出れた私は迷うこと無く合宿所へと戻れた。そして、合宿所の外で何やら慌ただしい様子の部員達。
「みんなー!」
皆に早くあれを見せたくて大きな声でそう叫んで手を振った。すると、それにいち早く気付いた大我が私の元に駆け寄って来たが、その表情は険しく、怒ってるように見えた。
「あのね、さっきね蛍が、」
「こんな時間まで何処ほっつき歩いてたんだ!です。」
「あ、えっと、なんか皆に喜んで貰える事出来ないかなーって思って山道歩いてたら、落っこちちゃって。でもね!蛍見つけたの!凄いんだよ!いっぱいいて!ぴかーって光って!」
「どれだけ心配したと思ってんだ!です。暗くなっても全然戻って来ねえし!何かあったんじゃないかと…つーか足!」
「足?」
大我に指摘され、足を怪我した事を思い出し、一気に痛みが蘇る。が、今はそれどころじゃない。蛍が最優先。
「蛍見に行こう!」
「ああクソっ…!」
大我は泥だらけの私をひょいと抱き上げた。