第10章 短編その1「春雨宿り」~明智光秀~
裏路地を抜けて、そうっと大通りにそそくさと出て、光秀の御殿への道へと曲がる。あと少しで光秀の御殿の方の路地へと曲がろうかという時だった。
後ろからグイッと体を拘束された。
「やっ!!!」
麗亞は佐助や幸村たちに教わった護身術実践編を思い出し。体を器用に捻り、思いっきりグーで後ろのやつのみぞおちを狙う。するとその腕を掴まれた。そしてその後ろに居た人物に驚いた。
光「ほう・・・・。少しは抵抗できる術と、どう逃げるかと言う頭も働かせたようだな」
「光秀さん!!!?」
いつものニヤニヤした顔がそこにはあった。
「じゃさっきの変な気配は光秀さんだったんですか? 私てっきり人さらいか何かと・・」
光「お前を攫っても置屋に売り飛ばす程の色気が無いからなぁ・・。」
そう揶揄されて、少しむぅっと、唇をとんがらせた。
「そういう良い方失礼ですよ? 私も一応女なんですから。」
その表情がこれまた愛らしく、まるで駄々をこねる小娘のようだ。
「悪い悪い・・・そう拗ねるな。お詫びに良い所へ連れて行ってやろう。もうその書状でお終いなのだろう?」
頭を子供にするようによしよしとなでつけ。麗亞が持っていた。風呂敷包みをひょいと取り上げた。
御殿の門に居た、家臣にそれを渡し、部屋に置いておくように頼むと、光秀はすぐさま出てきた。
「どこに・・いくんですか?」
光「秘密・・だ。」
より一層ニヤリとほくそ笑んだ顔がやけに如何わしくて。少し警戒モードに入った麗亞だった。
季節はもう春、先日までの寒さが嘘のように、昼間は気温が上がる。朝晩は冷えるが日が昇ればポカポカした陽気になる。
光秀の隣について歩いていくと城下のはずれに来た。
少し狭くなっていく道に不安になる。
(どこまで行くんだろう?だんだん道狭くなってくるし。でも光秀さんがいるから平気だろうけど)
光「そんなに不安そうな顔をするな。もうすぐだ。」
麗亞が不安に思っていることがバレバレのようだ。光秀には何の隠し事も出来ない。いつもいつも、心に思ったことを言い当てられて。どうしてと聞くと。
"お前の顔に書いてある"
と言うのだ。そんなに自分の顔はモノをいうのかとも思ったが前私の顔が煩いと家康に言われた事があるので言葉を発せずともきっと煩いのだろう。