第10章 短編その1「春雨宿り」~明智光秀~
「もしかして・・・光秀さんも・・・私と同じ・・気持ちなんじゃないかって。期待・・してしまうんです。」
その答えを聞きたい反面、これ以上聞いてしまってはもう後戻りはできない、この光のような娘が穢れてしまうのではないか・・・と。
光「ほう・・・それはどんな、気持ちだ・・。」
それでも聞かずにはいられない、聞きたい、聞かせてくれ・・・。
「アナタの・コトが・・・もっと知りたいんです。これがどういうことなのかまだわからないんですけど・・。とにかく。知りたい。」
光(麗亞本人もまだ、解らぬというか・・・。ふふ・・面白い・・じっくり教えてやろう。)
光「俺の事が知りたいか?、知れば、どうなるかわからんぞ?」
両方の掌で麗亞の頬を包む。麗亞の揺れていた目がしっかりと光秀を捕らえる。
「それでも・・・知りたい。貴方の事が・・・。」
その瞳の力強さに思わず息を呑む。
光「その言葉俺への挑戦状だと受け取ろう。いいだろう。暴いてみるといい。」
そういうとまた光秀は麗亞についばむ様に口づけた。
「光秀・・さん。」
光「だが、俺の事を知れば知るほど、泥濘にハマるぞ? 後悔するやもしれん。」
「しません。」
光「俺に惚れると地獄だぞ・・・。」
そういうとニヤリといつもの飄々とした笑みを浮かべた。
「覚悟の上です。」
何という気の強さだろうと光秀は面白い玩具を見つけた子供の用に、微笑み。麗亞を大事そうに抱きしめた。その腕の中の温もりがいつまでも温かいものであることを願うように。いつまでも、自分の中に留まっていてくれるようにと、光秀は心から思った。
こんな願いをしたのは生まれて初めてだ・・・
---それほど俺は、お前の事を・・・---
外は白みはじめ朝日が山々の木々の隙間から見え隠れしていた・・・。
春雨に
降られ一夜の温もりに
流れ流され淡き夢・・・
---春雨宿り fin---