第8章 Happy birthday! ~サプライズバースデー~
安土城下に行くと、普通に人通りが有った。それを見てなんかホッとする。
「よかった・・・人が・・居た。」
通りかかりの茶屋に行くと、店主が出てきた。麗亞はふとその店主に聞いた。
「あの・・・安土城の人たちは何処に?」
店主は言いにくそうな顔で麗亞に答えた。
店「何を言っているんです、安土城はもう何年も前から誰も住んでは居ませんよ。」
「えっ・・?でも・・・昨日は・・・。」
店「随分前に領主様が行方知れずになってからあの城は主の居ないままですよ。」
そう言うと店の中に入って行ってしまった。
「・・・・うそ・・・でしょ?だって昨日あんなに沢山の人がいて・・・信長様が居て・・・・・。」
信長様や皆が居ない?どうして?ほんとに違う時代にタイムスリップしちゃったの?
でもあの状態からしてそれも否定できない自分がいる。他に知っている人がいるかも・・・そう思い行き会う人に話を聞くとやはり帰ってくる答えは同じだった。
(嘘・・・どうして?)
余りの事に足元がフラフラとおぼつかない。何が何だかわからずぼんやりと歩いていく。
「そうだ・・・城に・・・もう誰かが帰っているかも・・。」
そうしてまだ城に戻ってくる、が誰も居る気配がなくしーんと静まり返っている。
「嘘でしょ・・・・ほんとに?」
そう思いつつ信長の居た天守へと走っていく。
「信長様!!」
やはり誰も居ない。しかし、文机になにか手紙が置いてあった。それをふと手に取り見てみると
【ゆふぐれに菖蒲の丘にて待ちわびる】
「・・・な・・にこれ・・?」
菖蒲の丘?え?なにこれ? ふと考えると以前に信長と行った菖蒲の花が咲いていた花畑を思い出した。
偶然にも見つけた信長様といったあの菖蒲の丘。もしかすると・・・。そう思い。城を後にした。
安土城の裏手の山道を一人でひたすら歩く。今から行けば夕方には間に合う。そう思いひたすら。がむしゃらに歩いて行った。
行っても誰かいるかどうかも確信がない。これで居なければもう後はない。でも信じるほかなかった一人きりで残された安土城に帰りたくない。
「はぁ・・っ・・・はぁ・・・」
途中何度も休憩し、木になっていた果物を取って食べながら先へ進む。あと少し、あと少しで着く。段々と赤みを増していく太陽を横目に。目的地へと急いだ。