第6章 Happy birthday! ~絶対体絶命編~
そのつぶやきは夜のとばりの中に消えて行った。
玄「まぁったく、謙信はいつもおいしい所を持って行くなぁ・・・。」
その声の方を皆が振り返ると信玄が、幸村と一緒に先ほど逃げた男をひっ捕らえてやって来た。
「信玄様!!」
玄「やぁ、我が姫、大丈夫のようだね。」
静(信玄? 武田信玄?何なの?この勢揃い組。この女もしかしてすべての男を攻略済みなの?)
幸「全く、お前いつもロクな目にあわないよな~」
あきれ顔の幸村に思わずしゅんとする。
「ゴメン・・・。」
謙「で、信玄何しに来た?邪魔をする気なら切り伏せるぞ。」
信玄は両手を上げて戦意が無い事をアピールする。
玄「あーー。ここでそんな話は無しな。姫が怯えるだろう?」
そして信玄は静の前に来るとニヤリと笑った。
玄「君の従者は今頃慌てて、お父上の元に帰って事の次第を説明中だ。今夜にでも安土に飛んでくるだろうな。」
静「なっ!!!?」
艶のある笑みを浮かべて信玄は静の間近で囁く。
玄「信長の寵姫を亡き者にしようとするという事は、信長に謀反を起こすのと同等だとは思わなかったのか?お姫様」
その言葉を聞いて静はハッとする。
玄「お家がお取り潰しになっても仕方ない振る舞いを君はしたんだ。それだけあの姫は信長にとっても大事な子なんだ。わかるかい?」
唇をかみしめる静に麗亞は信じられないという顔をする・・・。
幸「この女お前を従者に襲わせて、信長とお前を引き離そうとしたんだ。でも、従者が間に合わず、本物が出てきちまったけどな。」
「セイ・・・さん。どうして・・?」
静「邪魔だったのよ! 信長様が私のモノになればお家も安泰だし天下人の女になれるのよ。それをあの男は私に玩具になれと言ったの!あんな辱めは初めてよ! 悔しくて、そんな信長の女に復讐したかったの。そして信長が苦しめばいいって!」
謙「しかし、それも失敗して自らをも危険に晒すとは。なんと愚かな女子だ。浅はかな。信長もお前を許すまいて。」
悔しさに静はぐっ・・とこぶしを握る。そこに麗亞はそっと手を添える。
「セイさん・・・。大丈夫。話せばわかるから。」
麗亞の優しい声に静は緊張の糸が切れたのか、目から涙をぽろぽろとこぼした。