第6章 Happy birthday! ~絶対体絶命編~
秀「これはこれは、安土にようこそ、せい殿。しかし女子一人で旅とはなんと。」
静「いえ、これも我が家の慣習と申しますか。花嫁修業といいますか。」
「凄いよね!。私にはとてもできないよ。」
ほう・・とため息をついて熱っぽく話す麗亞に秀吉が声を掛けた。
秀「そろそろ帰ろうか、お屋形様ももうすぐ、仕事が一段落するはずだ。」
その声を聴いた静は慌てて、麗亞に声を掛けた。
静「暫く安土に滞在する予定なの、もしよければまた会って下さるかしら?私はそこの宿にでもお世話になるつもりだから。」
せっかく接点を持ったからには、麗亞を始末するまで逃がせぬと次に会う約束を取り付けようとする。
「ぜひ!旅の話をぜひ聞かせてください!またお会いしましょう!明日ぜひ安土を案内させてください。」
静「それは助かりますわ。ぜひよろしくお願いします。」
秀吉「では、せい殿また・・・。」
麗亞は静にブンブンと笑顔で手を振り秀吉に連れられて行ったのだった。その後ろ姿を見ながら、もやもやとした何とも言えない気持ちになった。
静(何よ! あの豊臣秀吉のデレデレぶりは?あんな女なのに、あの甘やかせよう、どんな手を使って秀吉までも骨抜きにしたのかしら。)
静は気を取り直して、茶屋の向かいにある宿屋へと入っていくのだった。
なんとか部屋を取れた静は旅支度を解き、二階の障子から見える安土の町を見渡した。活気あふれる街、往来する人。そして人々の幸せそうな顔。
静「なんだか私の国ととても違う。・・・・あんな鬼のような信長の城下がこんなに活気があるなんて・・・。どんな手を使ったのかしら。」
この時静は、織田信長というひととなりすらも、微塵も理解していなかった。
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「信長様!!!っ!!」
パタパタパタと天守に駆け上り、信長様の部屋の襖をあけ放つとそこには、久しぶりに部屋に居る信長が居た。
長「秀吉に、廊下は走るなとは言われなかったか?」
チラリと麗亞を見やるがその顔は穏やかだった。
「ご、ごめんなさいっつい・・」
ポッと顔を赤らめてばつの悪そうな顔をする麗亞を見てクスリと柔らかく微笑む信長。
長「そんなに俺に早く逢いたかったのか?」
片手をそっと差し出し、こちらに来いと促した。