第5章 Happy birthday! ~波乱の横恋慕編~
そこにはいつもの意地悪気な表情の光秀ではなくなんとなく、甘い雰囲気を漂わせた姿があった。頬に手を当てた方の親指でそっと頬の膨らみをなぞると、ピクリと体が小刻みに震えた。
「つっ・・・・。」
光「どうした?これ位で赤くなるとは、先刻まで男2人をたぶらかしていた魔性の女とは思えないが。」
「だから・・っ・・ちがっ・・」
言葉を発しようとした時、光秀の顔が更に近くなる。今にでもくっつきそうになる位近く光秀は顔を近づけた。
キスされる!!!? そう思った麗亞は思わず目をつむってしまう。すると光秀の両手が自分の首の後ろに回り・・。吐息が間近で感じられるのがその息の温かさで解る。
光「どうした?観念したのか?それとも怖くて震えているのか。」
耳の側でかすれた甘い声がする、その声が媚薬のように麗亞の体を痺れさせる。
「ち・・ちがっ・・・っ」
体を捩って逃げようとするがとうとう、光秀の腕の中にすっぽりと抱き留められてしまう。
「やっ・・光秀さん・・からかうのはもう・・・っ」
心臓が早鐘のように音を立てて鳴っている。それを光秀に悟られないかと心配する。いや・・もうとっくに悟られているのかもしれない。
光「ふっ・・・お前は可愛いな・・・。これごときでいい反応をしてくれる・・・。」
光秀は腕の中でかすかに震える麗亞を優しく抱きしめたかと思うと、頭のてっぺんに軽く口づけを落とした。
「え?」
光「さて、これでいい・・。」
キスされると思っていた麗亞は、さっきの光秀の行動が一瞬解らなかったが、ニヤリと笑っている光秀の顔を見てまたからかわれたのだと思った。
「ま・・・また光秀さん、からかったんですね!!!?」
光「いや・・そうでもないが。」
麗亞は着るものを軽く整え始める。と・・・その時に胸元に何か当たるものがあった。見るとそこには、いつの間にか、首にかけられたネックレスがあった。この時代では珍しい洋風のものである。
「こ・・・これは・・」
光「先日、南蛮の品を持ち帰った商人から譲り受けたものだ。お前に似合いそうだと思ってな・・・。」
「でも、こんな高そうなもの・・・。」
そう言って外そうとする麗亞の両手を掴んで自分の方に引き寄せた。その瞬間を狙って光秀は麗亞に口づけたのだった。