第5章 Happy birthday! ~波乱の横恋慕編~
(え?・・・今の・・・って)
ふいに口づけられたので、何が起こったのか理解できずに動きが止まってしまう。それをみて光秀は優しく微笑む。
光「これで代金は貰ったぞ・・・。それはお前のものだ。もうすぐ誕生日なのだろう?」
「あ・・・それは。」
(そっか、あの光景を見ていたんだから、知られててもおかしくないよね…。きっとそれを聞いて光秀さんわざわざ・・・。)
指で優しく麗亞の髪を梳いてやると、先ほど口づけた唇を親指でそっと撫でる。
「ぁ・・・。」
光「今回の事はこれで、俺達だけの秘密という事だ。お前も事を荒立てたくないだろう。素直に受け取れ。」
言っている言葉の割には優しい声音に、光秀の優しさがちらりと見えた気がしてなんだか麗亞は胸が熱くなった。
「ぁ・・有難うございます。・・大事にしますね…。」
少し照れくさそうにはにかんだ麗亞の表情に光秀は目を細め、両手を再び伸ばし、その腕に掻き抱いた。
「み、光秀・・・さんっ・・・」
光「今日の俺はどうかしてる・・・・。許せ。」
そう言うと、手を離し、すっと自分は立ち上がる。
光「用事を思い出した。これにて失礼する。」
「あ・・・。光秀さん。」
襖を開けて出ようとした時ふと、振り返り麗亞に告げた。
光「色々これから大変な事が起こっても、お前は自分の大事な者を信じていればいい。」
「えっ?それはどういう・・・」
その問いかけには答えぬまま光秀はそう言って部屋を出て行った。
光秀が麗亞の部屋を出て廊下を歩いていると途中の曲がり角で政宗が壁にもたれて佇んでいた。
光「なんだ政宗、待ち伏せか?」
政「ふっ、お前は腹の中が読めない奴だと思っていたけど、やる時はやるんだな・・・。」
チラリと光秀の顔を伺う政宗
光「なんの事だ?」
すると光秀の胸倉をつかんで顔に引き寄せる。
政「アイツの香りがお前からプンプンしやがる・・・。」
それを聞いて一瞬驚いたが、いつもの飄々とした態度で言う。
光「まるで犬のようだなお前は・・・。そんなに俺に触れられて嫌なら、お前のものにすればいい。」
そう言うと政宗の手を払いのけその前を通り過ぎて行った。光秀の後ろ姿を見送りながら政宗が絞り出すように呟いた。
政「出来るもんなら、とっくにやってるさ・・・」