第5章 Happy birthday! ~波乱の横恋慕編~
路地裏に連れ込まれた麗亞だったが、その声に思わず力を緩めると、口を塞がれてた手も離れた。そしてその相手の顔を見る。
「幸村っ! もぉっびっくりした~。こんな盗賊みたいなことしないでよ~。」
幸「こんな敵地で堂々とお前の事呼びつけられねーだろー?」
ばつの悪そうな顔をする幸村。
「でも佐助君は声かけてくれたよ。往来で。」
幸「奴は忍者だからな、そ、そこら辺は大丈夫なんだよ。」
苦しい言い訳をする幸村を冷ややかな視線で見つめた。
「で、こんなことまでしてどうしたの?何か急用?」
幸「お、おうっ・・・そうだ、コレ渡そうと思って。」
そう言うと。四角い包みを麗亞に手渡した。
「これって・・・・。?」
幸「お、お前にやるよ、行商してたら、一個だけ余っちまってさ、それだけ持って帰るのもなんだし、お前にやるよ。」
麗亞はその包みと幸村の顔を交互に見やる。
「あけてみてもいい?」
幸「す、好きにすれば、それお前にやったんだから。」
麗亞はがさがさと包みを開けるとそこには可愛い細工の白い花の帯留め飾りが入っていた。
「うわぁ・・可愛い~。コレ本当に貰っていいの?」
幸「お、おうっ、やるったらやるんだよ。」
「もしかして佐助君に何か聞いた?」
それを聞いて急にオロオロし出す幸村。
幸「な、何のことだよ、俺知らねーよ」
(もしかして佐助君に聞いたのかな?お誕生日の事。だからわざわざこれを私に・・・。)
「有難う幸村。嬉しい。残り物には福があるって言うものね。大事にするから♪」
頬を染めて微笑む麗亞が可愛すぎて幸村は思わず視線を逸らした。やけに頬が熱いと感じた。
幸「おうっ、の、残り物でも喜んで貰って良かった。じゃぁな、俺、信玄様のお使いの途中なんだ。」
どこかで聞いたようなセリフに思わず苦笑した。
(全く揃いも揃って二人とも主君思いなんだから。)
幸「じゃ~またなっ! 信玄様を見かけたらダッシュで隠れて逃げるんだぞ。」
そう言って幸村は片手を上げ路地から外へと人ごみに向かって歩き出した。
「ふふふっなにそれ・・・っ」
幸村の謎の言葉に苦笑しながらその赤い着物が見えなくなるまで見送った。
今日はお誕生日前とはいえ、一日で二人からも贈り物をされるという嬉しい一日になった。