第3章 Happy birthday!~進撃の龍虎編~
***5月5日***
この日は城下で催し物が色々と有るという事で麗亞は一人で出かけていた。他の武将たちは午後の行事の準備があるという事だった。
秀吉「未の中刻までには帰って来いよ。」
「うん、わかったよ。」
頭の中で時間を数えながら城を出る。
「ええと、未の刻が午後一時~三時だから、中刻はその真ん中の二時?かな・・」
ぶつぶつと考えながら歩いていると、ふと目の前に人がいることに気づいた時には、もう遅かった。
「あっ、ごめんなさい!!」
戦国時代では人とぶつかるという事がどんなに大変な事か以前身に染みたことがある麗亞は丁寧にお辞儀をした。もし相手が浪人などだったら、いちゃもんを付けられかねない。
玄「大丈夫か?怪我はないかな?前を向いて歩いていないと危ないよ姫。」
艶っぽい聞き覚えのある声にハッとして顔を上げるとそこには、微笑みを浮かべた信玄が立っていた。
「信玄様っ。本当にごめんなさい。色々考え事をしていたので。」
玄「ぶつかったのが私でよかった。もし不埒な浪人なら、今君はどうなっていた事か。」
内心信玄様でもなんかめんどくさい事になると思ったが、最悪の事を考えるとこっちの方がよかったのかも、とは思った。
玄「あ、今心の中で妥協しただろう?」
見透かされるようなことを言われてドキリとする。
「あっ・・えっ?いや、そんなことは・・・。」
あたふたする麗亞に意地悪気な顔をして告げた。
玄「妥協したついでに君の時間が許すまで、俺と一緒に城下を見て回ろう。節句のお祝い行事があるらしい。男一人で見て回るには寂しすぎるからな。」
「はい、それなら・・・。」
そうして二人は、昼過ぎまで色々と他愛ない話をしながら城下を散策したのだった。(この時の事はまたあとで追々に・・・)
その後麗亞は秀吉との約束の時間になったので、城へと帰って行った、その背中を見つめながら信玄は切なそうに呟く。
玄「はぁ・・・姫との逢瀬の時間はなんて短いのだろうな。」
後ろからすっと人影が出てきて不機嫌そうに言う
幸「あんだけ遊んでおいてそれはないでしょう?まだ帰らないんですか?信玄様。」
玄「あぁ・・・。まだまだだ…。それに、留まっていないと厄介な事になる。謙信が動き出した。」
幸「まさか、あの事を知ったんですか?」