第3章 Happy birthday!~進撃の龍虎編~
職「本当はもっと色々と有ったんですが、今は若いもんが品をもって行商にでておりまして。」
謙「いや・・・構わぬ。良いものが残っていて助かったぞ。」
謙信はお爺さんに代金を支払うと。丁寧に袋に入れられた品を受け取り、その家を後にした。
謙「さて、急ぐぞ佐助。信玄の奴に好き放題させるわけにはいかぬ。」
そう言うと、まっすぐに前を見据えて馬を走らせた。
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そのころ安土城下では、信玄が1人で市を散策していた。
玄「敵の領地ながらにぎやかだな安土は。魔王の御膝元とは思えぬ活気だ。」
すると一つの装飾品を売る行商の店が目についた。そこには色とりどりの「玉」と呼ばれる石でできた品が置かれていた。
玄「ほぅ・・・。これはこれは。」
その店の前に行き、品々を色々見た。
行「これは越後より出土した「翡翠」と呼ばれる石の細工でございます。旦那、何かお探しでしょうか?奥方の贈り物にいかがでしょう? 翡翠は、中国では正妻に送る石とされています。」
玄「成程。」
興味深げに品を見て行くと、ひときわ目を引いたのが薄紫色の翡翠の櫛だった。
玄「これは・・・色が違うが?」
行「お目が高い、これは紫翡翠といいまして、翡翠の中でも貴重な色の翡翠で出来ております。櫛になっているのはこの一点しかなくて。」
玄「じゃ、これを頂けるか?」
行「有難うございます。オマケにこの綺麗な柄の巾着にいれて差し上げます。奥方にどうぞ宜しく。」
奥方なんか居ないが、なんだかそう言われる事で本当に麗亞が奥方のような気持になったから良しとするかと思い、信玄は店主に代金を支払い品物を受け取った。
これは5月4日の出来事だった。そしてその行商は次の日には安土を旅立ち近隣の小さな町へと行商に歩くのである。この時、信長、謙信、信玄共、この行商と自分たちが何気に繋がっていることを本人達は知る由もなかった。
幸「お館様~。ここに居たんですか?探しましたよ。」
走り寄ってくる幸村を見つけた信玄
玄「すまない、ちょっと店を色々見たくて。」
幸「また甘い物とか買い食いしてたんじゃないですか?ダメですよ。」
ぎろりと睨む幸村をよそに
玄「そんな事とはしていないよ麗亞の誕生日の贈り物を探していたのさ。おかげでいいものが見つかった。」
そういうと満足げに微笑んだ。