第3章 Happy birthday!~進撃の龍虎編~
謙「佐助・・・。旅支度をしろ。私も安土へ行くぞ。」
眼鏡のブリッジを人差し指と中指で押さえ、目をつむる佐助。余計事がまた増えてしまったと、自分の最近の発言に後悔するのだった。
佐「わかりました・・・。」
謙信はふと何かを思い出し佐助に指示した。
謙「まて、佐助、安土に行く前に渟名河(ぬなかは)に寄ってゆくぞ。」
謎の言葉を発すると謙信は自室へ足早に戻っていった。
佐「ややこしい事になって来た・・・。」
空は晴れ渡っていたが、佐助の心の中は鉛色の雲が覆い尽くすような気持ちだった。
****5月4日****
謙信と佐助は渟名河へ向けて出立する。馬上で佐助が謙信に聞いた。
佐「何故、渟名河方面に寄るのですか?」
謙「あぁ、渟名河では「玉」と呼ばれる珍しい石が出土するのだ。そこで麗亞に送る品を探す。」
佐「玉・・?もしかして「翡翠」のことか?そんな昔の宝石なんかを現代に持って帰ったらどれほどの価値に相当するのか見当もつかない・・・。」
小声でボソボソっと独り言を言う佐助に、謙信が怪訝そうな顔をする
謙「何をぶつぶつ言っておる。」
佐「あ、すいません。本物の玉など見たことが無いので、つい興奮してしまいました。」
謙「ふっ・・・他愛ない事を。」
謙(あやつが気に入る品があればいいのだが・・・。)
謙信は麗亞の花の綻ぶ様な笑顔を思い出し。いつになく心が浮き立つ思いがしたのだった。
謙(信玄にだけは渡さぬ。いや、他の男全てあやつに触れることも許さぬ。)
謙「急ぐぞ、佐助・・・。後れを取るなよ。」
そう言うと馬に鞭を入れ、速度を上げて走り出した。
----そして半日ほど走らせた所で目的の地にたどり着く。
目的の場所に行くと、もう既に調べてあったのか、謙信は「玉」を採取して品に加工するという老職人の元を訪れる。
謙「邪魔をするぞ・・・。」
職「おお・・・、上杉様・・・。此処までよ―きなさった。」
そう言ってしまっておいた箱を取り出してきて謙信の前に広げ始めた。
職「今は形になっておるものはこれだけです。お目当てのものがあるといいのですが。」
するとひときわ目を引く、翡翠のかんざしが目に入った。綺麗に花の形に細工されていて。薄緑で繊細な形をしていた。謙信はすぐにそれを手に取った。
謙「これを貰おうか。・・・。」