第3章 Happy birthday!~進撃の龍虎編~
その後信玄は宣言した通り、即刻書簡の整理を終わらせ。もう次の日には安土へ向けて幸村と春日山城を出立した。
幸「あんなに早く終わるならなんで溜め込んでたんですか・・・。」
玄「まぁ、俺もやればできる男だという事だよ。」
晴れ渡る平原を馬で駆けながら、信玄に恨み言を言う。
幸「とにかく、今度から仕事溜めたら外出も甘味も禁止にしますからね。」
玄「外出はともかく、甘味だけは勘弁してほしいなぁ。甘味が無いと俺は死んでしまう。」
幸「甘味不足で死にたくないなら、ちゃんとやる事やってください。」
信玄はため息をつく。
玄「なるべく努力はしよう。」
ふと、空を見上げながら少し後方より、雲が出てきたのを確認すると。信玄は幸村に告げた。
玄「幸、早駆けるぞ、後ろから嫌な雲が出てきた。」
幸村はちらりと後方を確認する。確かに雲が集まってきているようだった。
幸「分かりました。急ぎましょう。濡れ鼠にならないうちに。雲を振り切りますよ。」
玄「あぁ、さぁ、競争だな幸。」
二人は馬に鞭を入れ、速度を上げて走り出した。
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その後一昼夜、走り続けたおかげで、幸い雨には降られずになんとかたどり着くことができた。町はずれの旅籠に入るとかろうじて空いていた一部屋を確保し二人はひとまず体を落ちつけたのは、もう日も傾きかけた夕刻の事だった。
露天風呂に浸かりながら幸村が大きく伸びをする。
幸「無茶しすぎですよ~強行軍にも程がある。体バキバキですよ~。」
玄「なぁに、これくらいの一つや二つこなせなくて、戦は出来ぬぞ幸。」
幸「年寄りの癖に無茶するんですからお館様は。」
玄「ふふっ・・・。お前も何かの為に無茶をする時がきっと来るさ。」
見上げると先程まで夕暮れだったのが既に空には星一つ二つと見えていた。
風呂から上がり部屋で寛いでいる時、どこからか声が聞こえた。
玄「佐助か?」
部屋の入り口を見守っていたのだが、何故か天井裏よりいつものごとく音もなく降りてきた。
幸「おいおい~旅籠でも天井から降りてくるのかよ。」
あきれた顔で佐助を見る幸村に佐助が言う。
佐「あ、気にしなくていい、なんとなく天井裏の方が落ち着くんだ。特に自分のテリトリー外の土地だとつい、屋根裏に居る癖が。どうも職業病のようだ。」