第1章 黄泉還り
私の声にビクリと反応し、彼はその顔を私に向ける。
「………は?…アンタ……ここで何してんだ?……兵団服を着てねぇってことは一般市民か?ここは関係者以外立入禁止区域だぞ。」
彼の言っている言葉の意味が分からず、あまり働いてくれない頭をフルに使う。
兵団服……
一般市民……
立入禁止区域……?
そもそも私はさっきまで暗闇にいて……
そのまたさらに前は、学校の屋上から飛び降りたハズ……。
運良く助かったとしても、それは現実的に考えて、病院のベッドの上のハズだ。
ここが天国じゃないのなら、ここは一体……
『あの……ここは、どこですか?…私………。』
戸惑いを隠せない私の表情に彼は目を見開く。
「おいおい、まさか場所が分からねぇって事かよ?」
天国じゃないのなら、分かるはずがない。
こんな綺麗な景色なんて、今まで見た事がないんだから……
彼の問いに遠慮気味に頷いた私を見て、彼は乱暴に頭を掻いた。
「あー、クソッ!こんな状況まだ教えて貰ってねぇぞ!取り敢えず教官のとこに連れてくしかねぇか。」
溜息を吐かれ、差し出された大きな手。
手が近付くと叩かれる事を覚えている私の身体は、反射的にビクリと強張らり、両手で身体を庇うように身構えた。
ドクドクと鳴り止まない心臓の音。
そんな私の姿を見て、彼はフイ。と、顔を逸らす。
「……何も、取って食ったりしねぇよ。」