第1章 黄泉還り
不器用に呟かれたその言葉に、恐る恐る手を伸ばす。
ーズキン
あぁ……
やっぱりか。
伸ばした手から伝う痛みが、ここが天国なんかじゃなく、実在する世界なんだと脳に認識させた。
だって……
日頃の暴力に耐えていた身体の傷が、シクシクと痛むから。
「………その痣は…?」
捲れたシャツの下に薄っすらと覗く新しい痣を見て、彼の訝しげな瞳が私に向けられる。
咄嗟に隠そうと思って見たけど、見られてしまってからでは、もう何をしても遅い気がして、私はつい目を伏せてしまった。
……やっぱり、異端だよね。
クラスにも、こんな痣を付けてる子なんて、私しかいなかった。
彼の問にチクチクと心臓が痛む。
「いや、悪りぃ。こんなことは聞くもんじゃねぇよな。」
そう投げ掛けられた言葉は、同情なんだろうか……
それとも哀れみなんだろうか……
何にせよ、そんな視線には慣れてる。
学校でも、私はいつもそうだったから……
「……なぁ。」
彼に手を引かれ、俯いていた顔を少しだけ上げて、彼の表情を見たら、優しげに揺れる瞳とぶつかった。
「………アンタの……名前は?」