第5章 座学
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講義はところどころ意識がぶっ飛んでいた。
しかし、まぁ、今日の講義は文献読んでばっかだったし、書物に目を通すだけで大丈夫そうだ。
最後は寝てただろ、なんてツッコミはしないでくれ。
……ミサキにそれを見られていたってだけで、恥ずかしくて仕方がねぇ。
文献に合わせて指で文字をなぞる俺の手の上。
指が、触れそうで触れない距離。
ふりがな?なんてものを書いていくミサキの文字は、俺には読む事が出来なくて、その文字が、どこの世界のもので使われていたのかも、サッパリ分からなかった。
……お前、どこから来たんだ?
なんて事を聞くのは、野暮なんだろうか。
まぁ、そんな事は置いといて、ミサキは文字を覚える事からのスタートだからだいぶ苦労するだろうが、こうやって合間に教えてやれば内容自体は頭に入るだろう。
憲兵団に入るには成績上位10位番内に入らなければいけねぇっつーのに、自分の事よりミサキの事を優先させようとする俺は、自分が思っているよりもだいぶイッちまってるらしい。
俺の説明に夢中になっているミサキ。
そろそろ辺りが暗くなり、夕陽の位置は低い。
「今日はここら辺にしとくか。」
『今日はって、また教えてくれるの?』
ミサキがガバッと振り返るもんだから、また心臓に悪い悪い。
……だから、近けぇーって。
俺の視界に映るミサキの、驚いたような顔。
だが、嬉しそうにも見えて……
「仕方ねぇな。暫くは付き合ってやるよ。」
俺はその頭をクシャリと撫でた。
別に毎日でも構やしねぇが、それを素直に言える程キザな男にはなれねぇ俺は、やっぱりまだまだガキだ。
いや、大人になったからって、キザな野郎になれるのかは定かではないが。