第5章 座学
[ジャンside]
講義は夕方まで続き、昼過ぎまでは起きていたが、そっからの記憶がねぇ。
講堂からの帰り道、俺の服の裾を掴むミサキが少しだけ顔を赤くし、モジモジしていたから、
嬉しい事でも言われんのか?
と、淡く期待しちまったが、只単に、文献に使われた文字が分からなかったから教えて欲しいとの事だけだった。
変に期待なんかしちまって、恥ずかしい事この上ない………。
……が、一番最初に俺を頼って来てくれたのは、やっぱり嬉しくて。
ミサキの頭をクシャリと撫でる。
「食堂だとうるせぇから、あそこにすっか。」
ミサキと出会った場所
ミサキを抱き締めた場所
俺とミサキしか知らない、二人だけの場所
『あ、湖の……』
「バカ!大きな声で言うんじゃねぇよ」
なんたってあそこは誰も知らない、秘密の場所だからな。
ガキっぽい言葉で言うなら秘密基地ってやつになんのか。
『えー。マルコにも教えてほしいとこあったのに。』
項垂れるミサキ。
俺は笑って、その小さな手を引いた。