第5章 座学
私が座学で学ぶ事は二つ。
この世界の歴史や、巨人に対しての知識。
そして、一番難しいのは、文字。
文字は自分でどうにかしないといけないけど、それには、教えてくれる人が必要で……
隣を歩くジャンの上着の袖を、摘んでみる。
軽く摘んだだけなのに、ジャンは気付いてくれて、俯く私の顔に合わせるように、少しだけ屈んだ。
「ミサキ?どうした?」
優しく揺れる瞳とぶつかり、何故かドキリとする私。
この世界の仕組みは難しい。
でも、この世界の人は、こんなちっぽけな私を受け入れてくれる……。
『あ……のね。』
「……なんだ?言いにくい話しか?」
急に顔を赤くするジャン。
ジャンは頭を乱暴に掻き、私から視線を逸らした。
『いや。言いにくいとかはないんだけど、ちょっと……文字が分からなかったから、教えて欲しいの。』
「………文字?あぁ、何だ。文字か。」
肩透かしを食らったように見えるのは気のせいなんだろうか?
それとも、文字すら読めない私に呆れてる?
ジャンの何とも表現し難い表情に、少しだけ不安になっていると、クシャリ。頭に大きな手が触れた。
「食堂だとうるせぇから、あそこにすっか。」
……あそこ?
ってどこだろう?
食堂以外でジャンと行った事がある場所……
『あ!湖の……』
「バカ!大きな声で言うんじゃねぇよ!!」
思ったより大きな声が出たみたいで、ジャンは周りをキョロキョロと見渡す。
「あの場所は、俺とお前だけの秘密な?」
いたずらっ子のように笑うジャンが、何故か眩しく見えた。