第5章 座学
講義は夕方まで続き、文献の文字が分からない私は、用紙に教官からの口頭での説明をメモしながら、必死に文献と照らし合わせた。
「今日の講義はここまで。」
文献を閉じ、講堂を出て行く教官の姿に、周りも椅子を引き始める。
私も、開いていた文献を閉じ、隣で完全に目を瞑っているジャンの肩をソッと叩いた。
『ジャン?』
今日は天気が良くて、ポカポカしているのも手伝ってか、ジャンの瞳が開く様子はない。
目を瞑っているジャンの顔は、いつものキツイ顔と違って、少しだけ幼く見えた。
『ねぇ、ジャン。みんな兵舎に戻ってるよ?』
少しだけジャンの身体を揺らすと、頬杖を付いていた手から顔が離れ、カクンとなる首に、ジャンはビックリして目を開く。
「……あれ。終わっちまったか?」
『もぉー…。寝ちゃってたでしょ?』
「バッ……!!寝てなんかねぇよ!!」
隠し切れてない焦り顔。
頰を赤くさせるジャンの姿に、思わず口元が緩んでしまう。
……頬っぺた、シワ付いてる。
『私達も行こ。』
「お前、何だよその顔……。馬鹿にしてんだろ。」
笑う私の頭を、ジャンはクシャリと撫で、目を細めて溜息を吐いた。
マルコとコニーは先に出たみたいで、講堂にはもう私とジャンの2人だけ。
椅子を引くジャンに合わせ、私も文献を持って立ち上がる。
ジャンは今日の講義の内容、分かってたのかな?
メモ取ってるの私だけだったし、周りはみんな分かった顔で聞いていたから、分からなかったのはもしかして私だけ?