第4章 適正試験
ミサキの瞳は、薄暗いせいか、妖艶に笑っている様に見え、そのぽってりとした唇は、月を反射してヌラヌラと光る。
ドクドクと早くなる鼓動。
胸の奥が苦しく……
そして、熱くなる。
………何も分かってねぇ面しやがって。
汚れも何も知らないような、無垢な顔しやがって。
ミサキの長い髪をサラリと触る。
そのまま、その手を下ろし、頬に触れ……
唇に触れた。
『ジャン……?』
まるでお前が何も分かってねぇような面しやがるから……
俺は、言葉を遮るように抱き締めた。
「お前は……強くなんかならなくたっていい。俺が、側にいるから。」
フワリと鼻にかかるミサキの甘い香りに目頭が熱くなり、俺は眉を寄せ、目を伏せた。
やけに煩い心臓の音が、ミサキにも伝わっちまいそうで、情けねぇな。
お前に暴力なんて振るうヤツがいたら、俺が全力で止めるから……
お前の身体に触れるようなヤツがいたら、俺が全力で引き剥がすから……
『ジャン、苦しいよ。』
俺の背中に周る、ミサキの華奢な腕。
まるで想いに応えるように抱き締め返されたと思えるのは、俺の贔屓目だろうか。
『……苦しい。』
摺り寄るミサキの髪に顔を埋め、泣きたくなるような、自分のどうしようもない程に情けない感情の意味を理解した。
俺は……
こいつに、惹かれている。