第4章 適正試験
ミサキが知る地形には限りがある。
教官室
女子寮
広場
そして──……
なんとなく……
なんとなくだが、そこにミサキがいる予感がして、なんとなく歩き……
なんとなく、ミサキと出会った場所に進む。
昨日、俺達が通った道は、2人のシルシが付いたように、周りの雑草に、足で踏み付けた痕跡が残っていた。
松明なんか持っちゃいねぇから、月の明かりだけを頼る道。
別段、遠いってワケじゃねぇが、木の影に光が隠れると視界が真っ暗になる。
草むらを嗅ぎ分けていくと、広がる湖。
日中とは違い、静かに見えるそれの近くで、体育座りをしているミサキがいた。
月夜に照らされた湖と、ミサキの整った顔。
太陽に煌めいた先日とは違い、ミサキの遠くを見ている眼差しが、やけに優美に見えた。
ゴクリと息を飲んで、一歩ずつ近付く。
「おい、ミサキ。羽織くらいしねぇと風邪引いちまうぞ。」
こちらに気付いたミサキがゆっくりと振り返る。
『ありがと。でも、もう少しだけここにいたい。』
フワリ。
笑う顔は、幼くて……
俺は小さく息を吐いて、ミサキの隣に腰を下ろした。
『不思議だね。私、ジャンが見付けてくれたからここにいれるの。』
視線を湖に戻し、目を細めながら話すミサキ。
「そうだな。」
シャツだけしか上に着ていないミサキの肩に、俺は自分が着ていた羽織を被せた。
『私ね、他者から暴力や、その………恥辱された事しかなかったから、ここにいるみんなに出逢えて本当に良かった。だから、ね。……みんなを自由にする為に、強くなりたい…って決めたの。』