第6章 desire
俺の部屋の前に立つと、夕べのふたりの姿を思い出してしまった。
玄関の鍵は開けられてて、大野さんの後ろを少し躊躇いながら付いていく。
「おはようございます、大野さん」
「おはよ…」
「あれ?大野さん朝、弱い人ですか?」
「なんで?」
「いや、機嫌悪そうなんで」
「そんなことねぇよ…」
「おはよ、智、翔ちゃん」
「おはようございます…」
何となく二宮さんを直視出来なくて、智さんの後ろに隠れるように立った。
「あれ?もしかして、邪魔しちゃった?」
二宮さんが智さんに向かって聞いた。
「…されてねぇよ」
智さんが、少し不貞腐れた感じで返事をした。
「ははっ、智わかりやすっ!」
「だからっ、されてねぇって」
「口ではそう言ってもねぇ…
翔ちゃんのその表情、ヤバイでしょ?
外出したら、すぐ襲われちゃうよ~」
二宮さんがそう言うと、雅紀が俺の事を覗き込むように見た。
「あ、ほんとだ!大野さんが不機嫌になる訳ですね?すみません」
雅紀が笑いながら楽しそうに言った。
「お前なぁ~…悪いと思ってないだろ」
「え~、だって付き合い長いですけど、初めてですもん、色っぽい翔ちゃん見るの。超貴重」
「もういいから、飯食ったらとっとと帰れよ」
「早く帰らせて何すんの~?」
「何もしねぇよ…」
「翔ちゃんこのままにしとくの?可愛そう、智って鬼だね」
「誰が鬼だよ。邪魔したのはお前らだろ」
「ははっ、やっぱり邪魔されたと思ってんじゃん」
二宮さんが笑ったら、智さんは肩を落として
「頼む、早く帰ってくれ…」
やはり二宮さんには勝てないみたいだ。
流石にそんな智さんを見て、二宮さんと雅紀も気の毒になったようで、食事を終えると早々に帰っていった。