第6章 desire
「…だって、あんな恥ずかしい……智さん、嫌わないで…」
智さんは一瞬驚いた顔をしたけど、ふっ、と微笑んで俺の涙を指で拭ってくれた。
「馬鹿だなぁ、嫌うわけないじゃん…あんな綺麗な翔を見たら益々好きになっちゃうよ…」
「…綺麗?」
「うん、すっげぇ綺麗だったよ…昨日までのキス待ち顔も可愛かったけど、今日のは綺麗すぎて我慢できなかった」
俺が綺麗?さっきの二宮さんみたいだったってこと?
「他の奴に、さっきみたいな顔見せちゃ駄目だからね?」
そう言うとぎゅっと抱きしめてくれた。
「智さんの前だったらいいの?」
智さんの顔を見た。
「勿論、大歓迎。あ、でもふたりきりの時にして?
人前で襲いたくなったら困るから」
そんな事を真面目な顔をして言うから、可笑しくなって笑ってしまった。
「なんで笑ってんの」
「だって、智さん真面目な顔して冗談言うから…」
「冗談じゃないから。そんくらい強力なんだって、翔の色っぽい表情…あの顔見て我慢できるほど、俺の理性は強くない」
色っぽいなんて言われたら、恥ずかしくなってきた。
智さんが優しく微笑んだ。
「うん、色っぽい翔もいいけど、照れて紅くなる翔もやっぱ可愛い」
チュッと唇に触れるだけのキスをされたら、やっぱり恥ずかしくて更に顔が熱くなる。
「なんでさっきまであんな激しいキスしてたのに紅くなるかなぁ…
やっぱり、育てるのには時間かかりそうだね」
「え、育てるって?」
二宮さんが言ってたこと?育て甲斐があるって…
「翔には、まだまだもっと綺麗な顔を見せて貰わないとってこと…」
「そんなの無理です…俺、そんな自信ない…」
「心配すんな、翔がするんじゃなくて俺がさせるんだから」
いつも優しい目をしている智さんが、今まで見たことのない眼差しで俺を見てる…
ううん、違う。初めてじゃなかった…
さっきキスの途中でも見た瞳…
収まっていた体の奥のむずむずを、また感じた。