第6章 desire
智さんに『逃げないで』なんて言われたら、逃げるわけにはいかなくて…
智さんのシャツを握りしめ、必死に堪えた。
智さんの舌が、俺の舌を絡めとり吸い上げる…
はじめこそ戸惑って、智さんにされるがまま受け止めることしか出来なかったけど
繰り返されるうちに気持ち良くなってきた…
「ん…ふんっ、」
呼吸が苦しくなってきても続けられるキス…
思考力も体の力も奪われてく…
どれくらいそうしてるのかも分からない…
けど、やめてほしいなんて思わなくて、智さんが離れていく時も、名残惜しくて智さんを見詰めた…
「あ…んっ…」
「その顔ヤバすぎ…」
智さんの手が頬を撫でる…
その感触さえも気持ちいい…
「んっ…」
「はぁ~…マジでヤバイんだけど…」
そう言うと、また智さんが近づいてきた…
勿論拒む必要もなく、唇を開いて受け止める
さっきよりも激しく絡めみ合う舌と舌…
夢中になりすぎて、頭がぼーっとしてきた
「んっ、んん…ふっ…」
ふわっとした感覚に襲われ、体から完全に力が抜けた…
慌てた様に智さんが体を抱き留めてくれた。
「翔⁉」
「ふっ、あ、んっ…はぁ…」
智さんの腕の中で大きく深呼吸をした。
「ごめん…やりすぎた」
申し訳なさそうに言う智さんの言葉に、小さく首をふって否定した。
智さんに凭れかかると、頭を優しく撫でてくれる…その手が気持ちよくて目を閉じた…
呼吸が落ち着くと、心も落ち着いてきて
さっきまでの行為を思い出し、急に恥ずかしくなった。
俺、あんなキスしたの初めてなのに
自分から智さんを求めてしまった…
智さんに軽蔑されたらどうしよう…怖くて顔が上げられない。
「翔、落ち着いた?」
「………」
「翔?顔見せてよ…」
智さんはそれでも無反応の俺の顎に手を添え上を向かせた。
「翔…なんで泣いてんの?」